ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第15章 Please forgive me.
《アッシュside》
一生忘れることのない記憶。
…いや、
忘れることを許されない記憶。
自分の猛る性器が粘膜の狭い隙間を割って入る瞬間、目隠しをされていて見えないはずのユウコの目を見た気がした。
このあとユウコに訪れる痛みを俺は知っている。まるで体を引き裂かれるような吐き気さえ催す程の苦痛。
何よりも大切だったユウコを、
ずっと守ってきたはずのユウコを、
ーー俺が今から傷つける。
そう実感した瞬間、
視界がグラグラと揺れた。
ごめん…ごめん、ごめん…
ユウコの絞り出すような悲鳴を聞きながら、それでも尚、性的興奮が収まらない自分に心底失望した。
俺はあの日到底許されないことをした。
…あの日だけじゃない、
そのあと何度も、数えきれないほどに。
ユウコの感じた痛みを、刻まれた心や体の傷をなかったことになんてもう一生出来ない。
それなのに…共に日々を過ごすうち、どんなに抑えてもユウコへの愛は勝手に募っていく。
俺はなんて最低な男だろう。
その罰のように、俺が魘される悪夢の大半は俺がユウコを組み敷いているシーン。まるで「この事実を忘れるな」と釘を刺されているかのようだ。
なぁ、ユウコ…
どうしてお前は俺と一緒にいてくれるんだ
どうして屋敷を離れる時、俺に着いてきてくれたんだ
俺が…俺の人生を地獄に導いた最初の男を恨んでいるように、自分を傷付けた初めての男を恨んでいるんだろう?
お前は優しいから、それを表に出さない。
俺は時々…お前の優しさが苦しいよ。
そんなユウコの為にお前の行きたいところに行け、と言ってあげなくてはいけないこと、本当は痛いほどにわかってるんだ。
でも…ごめん、
汚れた俺にお前は眩しすぎるのに
どうしてもお前を手離せない。
どの面下げてと思われても、お前を守りたい。
お前だけは失いたくない。
その綺麗な手を汚させたくない。
俺の手の届くところにいて欲しい。
この想いを伝えることは出来ないけど
…愛してる、
お前より大事なものなんてどこを探しても見つからない。
俺のことは、一生許さなくていい。
だから…
お前を想い、
お前の為に生きることだけは
…どうか許してくれ