ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『…っ、ぅ…あ』
今まで他の人から同じことをされた時は、舐められるのも触られるのも気持ち悪くてずっとアスランのことを思い浮かべて耐えていたけど、その時とは全然違う。全く気持ち悪いだなんて思わなかった。
…でも、私にはこれがどういう意味を持つ行為なのかわからなくて、セックスと聞いた以上やっぱり少し怖かった。
ずっとセックスから私を守ってくれたアスランがあんなことを言ってきた理由は、きっとパパに何かを言われたからだ。パパは優しいけど、時々怖くてよく分からないことを言うから。
ふとマシューの言葉を思い出す。
マシューは全部知ってたんだ。
もちろんジョセフも…。
ーー「ユウコはどんなことが起きても、アッシュに何をされても…彼のことを好きだって言える?」
私、アスランのために耐えるのなら全然苦しくないよ。私はアスランのために生きているんだもん。
何があったって絶対嫌いになんてならないし、恨んだりもしない…何が起きても私は、アスランのことがずっと大好きだよ。
それなのに、セックスってどれくらい痛いのかなってものすごく臆病になってる自分もいる。マービンのところにいた時は、アスランを守りたくて私とセックスしてくれればって思っていたくらいだったのに…
…私はいつの間に、こんなにアスランから守られることに慣れてしまったんだろう。
『…ッ…ァ、スラン…』
そう名前を呼んで、思ったよりも自分の息が上がっていたことに気付く。それに頭がぼんやりして思うように話せない。
アスランの顔が見たいよ…
ギュッてしたいよ…
『…め、の…やだ…ッ…ぎゅって…』
「っは…ぁ…いや、だよね…ごめん」
私の伝えたいことは何一つとして伝わっていない。
『ちが…、か…おっ…み、たい』
「でもたくさんキスしないとだめだから…もう少しだけ、がまんして…?」
『…あ、ぅ…っ!』
もうどこに触れられてもビクッと体が勝手に反応する。
やだ…こんなの恥ずかしい、
いやじゃないけど、もういやだ
体があつくて、ゾクゾクして気持ちいい…
『…ぁ…ん…ン…』
気がつくとなんだか周りが騒がしかった。
耳をすますと、コツコツというパパの靴音が聞こえてきた。