ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
今朝見たビデオ…
ディノが勉強と言って僕に見せたアレだ。
ーー「レディの体の扱い方、並びにセックスの手順を頭に入れておきなさい」
え…?
僕が顔を見ると、ディノは口の端を上げていた。
そんな、まさか…
「ほら、檻に入れ」
背中を押され目の前がぐらりと揺れる。
両手の鎖がジャラと音を立てた。
足が棒のようだ。
「……まっ…て」
「早く歩けよ」
「…ッ…まって…!!!」
「おや…どうしたんだいアッシュ、先程まではあんなに檻に入りたがっていたではないか」
「ねぇ、パパ…ぼくの考えすぎ、だよね?」
「……なにがだ?」
「いつもみたいに僕がお客さんとするんだよね?だからユウコは関係ないよね?…早くそこから出してあげてよ…っ」
そう言うとディノはフフッと笑った。
「…いいやアッシュ、今日のお前のセックスの相手はこちらのお客様方ではない」
「…っ…」
「賢いお前なら…もう分かるね?」
今までに何度か聞かされたディノの言葉、そして昨日のジョセフの不思議な言動…もう何を思い浮かべてもひとつの答えにしか辿り着かない。
「…お前の愛するレディ、ユウコだよ」
何かを言おうと口が勝手に開く。
でも何ひとつとして言葉にならない。
目の前が真っ白になって今にも倒れてしまいそうだった。手も足も止められないくらいに震えている。
「…アッシュ、中に入りなさい」
いやだ…
「さあ、早く」
無理だよ…
「アッシュ!」
「…で……できない…っ」
やっと発した言葉は消えそうな程に小さかった。
「…アッシュ、貴様は同じことを2度も3度も繰り返すような愚か者だったのかね?…この言葉をもう忘れたか」
突然、ジーという機械音が響く
【「ならば…アッシュ。お前のすべきことはひとつだ」】
【「誓うよ…もう二度と逆らわない、僕きっといい子になるから!ユウコは…っユウコだけは…!お願いだよ、パパ…」】
「…っ!!」
「誓う、もう二度と逆らわない…この言葉に叛いた罰は重いぞ。…1度見ておくがいい」