ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
客席全員の目が僕に向いている。
訳がわからない…
どうして僕がステージに?
それに僕が、主役?
「ふっ…どうしたアッシュ」
「な…なん、で…?」
「ハハハ…いかがでしょう?ご覧の通り、アッシュはこのあと自分の身に何が起こるのかを知らないのです…そしてそれはアッシュだけではない」
ディノが合図をするとあたりは真っ暗になった。僕が背中を押された所の反対側からガラガラとなにやら騒がしい音がする。
バッと再び明かりがつくと
そこには大きな檻があった。
そしてその中には、
「…ユウコ…っ!!」
ベッドの上で目隠しをされ、腕を後ろに拘束されたユウコの姿があった。檻に駆け寄り柵を掴む。
どうしてユウコが檻の中に…!?
『…ア、アスラン?』
「ユウコ、僕だよ…アスランだよ!」
『…アスランッ!!』
「っあ、まって…来ちゃだめ!!」
『!!…ゔっ…ゲホッ…ぅ…う』
「あっ…!」
繋がれていたリードで首が締まってユウコは激しく咳き込んだ。
「ユウコ大丈夫!?…パパ!早く開けて!」
「ハァ…登場して早々騒がしい…。こちらのメスはお初の方もいらっしゃるかと思いますが、私の愛玩ペットのユウコと言います。アッシュとペアで保護した、従順な可愛い子ですよ」
『…ぅ…っはぁ…』
「パパ!」
「こらアッシュ落ち着きなさい。すぐにお前もこの中に入ることになる。…だが、その前に準備があるのだ」
すると3人のスーツの男たちが出てきた。僕の所に2人、ユウコの所に1人が近づく。
「…なに?」
「さぁ、始めなさい」
男たちは突然僕の体を押さえつけて、両腕に長い鎖のついた手枷をそれぞれはめた。
「…っや、だ!何するんだよ!」
「大人しくしろ…っ」
「ユウコ…!」
心配になってユウコに目を向けると、仮面をした男が檻の中に入りユウコのリードをベッドから外していた。
「パパ、準備ができました」
「…よし、良いだろう」
なんなんだ…?
ディノのこの興奮した顔、さざめく客席…それに檻やこの手枷…これから何が起こるんだ?
「アッシュ、今朝見たビデオは覚えているね?」
「…え?」
「ッフ……こやつを檻の中へ」