ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『パパ、おはよう!』
「…おはよう、パパ」
「……ああ、ついにこの日がきたか」
「なに?」
「ユウコ、支度をしなさい」
『…え?今日おでかけなの?』
「今日は大事なイベントがある、別室でマシューが待っているよ」
『大事なイベント?』
「あぁ、そうだよ…さぁ、顔を洗ってきなさい」
『…はぁい』
「……っ」
私がベッドから降りようとするとアスランに腕を捕まれる。
『…アスラン?』
「……パパ、どこに行くの?僕も一緒に行ってもいい?」
「ハハ…アッシュ安心しなさい、後に合流することになるよ。その前にお前には少し見せておきたいものがある。ユウコ、早くしなさい」
アスランの手が離れたので、私は洗面所に向かい顔を洗う。
大事なイベントってなんだろう。
マシューがいるってことは偉い人に会うのかな?
アスランにもあとで会えるって言ってたけど…離れたくないな…
『……っ!』
ふいに、鏡にうつる自分に驚く。
短い髪…まだ慣れないなぁ…。
部屋に戻るとアスランとパパが話しているようだった。
「…今日何があるの?」
「だから言っただろう、大事なイベントだと。……おぉユウコ、支度が出来たかね?」
『あ、うん』
「では行こうか」
パパがドアを開けると廊下にジョセフが立っていた。
「…ではマシューのところに」
「はい。…ユウコ、アッシュに挨拶は済んだか?」
『ま、まだ』
私は小走りにベッドに向かいアスランの手を握った。
アスランもキュッと握り返してくれる。
あのクリスとの出来事以来、アスランとずっと一緒にいたから私は不安で仕方なかった。
『…アスラン、』
「ユウコ」
名前を呼ばれたかと思ったら、手を引かれグッと抱きしめられる。
『っ…わ』
「…なんだか離れるの久しぶりだね」
『…うん…ちょっと怖い…』
「…………」
『アスラン…?』
「……大丈夫」
『…だ…大丈夫…』
アスランにそう言われ、自分に言い聞かせるように繰り返した。
「うん…ユウコまた、あとでね?」
『うん…またあとで』
「…ではパパ、先に連れていきます」
「ああ」
廊下に出るとバタンとドアが閉まった。