ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
僕は布団から飛び出しジョセフに掴みかかった。
「わかってるならユウコに謝って…っ!」
「…っ、……すまなかった、ユウコ」
ジョセフは眠るユウコに目を向けてそう言った。
「本当は僕がずっと傍にいてあげたかったんだ…っでも、それはできなくて…だから…っ」
「ああ…」
「…僕、ジョセフを信じてたんだよ…!それに、これはジョセフにしか頼めないことだったから!」
「…知っている、すまない…全て俺が悪い、これは全て防げたことだった。…その場でパパやマシューに確認を取っていれば…部屋の新しいロックを教えなければ…マークとクリスのことを少しでも疑っていれば…」
すまない、と繰り返すジョセフに何も言えなくなる。
「…結局俺が信じきれていなかったんだ、どこかでクリスがそんなことをするわけがないと思っていた…、まさかあのクリスが…と。…俺がユウコを傷付けたも同然だ」
「…マークはどうなったの」
「……俺が処罰した」
処罰…、殺したってこと…?
「…っ…クリスは、」
「…それは言えない」
「……ユウコが気にしてる、クリスのこと」
「何故」
「知らない!…そんなの僕だって知りたいよ」
「…そうか」
「それで…こんな遅くに何しに来たのさ。寝顔見ながら“すまない”って唱えるためにきたわけ?」
「…お前たちの間に何もない夜を見ておきたかった」
「は?」
「あの日言ったことを覚えているか?」
「…何が起こっても、ってやつ?」
「あぁそうだ。…自分で言ったことではあるが、本当はそんなことありえない」
「……」
「2人の間に何もない夜は…今日で最後だ」
「…どういうこと?」
「でも、それでもお前たちには変わらずにいて欲しい…これは俺の願いだ」
「だから、どういう意味?」
「…っ」
「また、“すまない”…?」
「…ああ」
「大丈夫だよ…僕たちは何が起きても変わらない」
すると、背後から布団が擦れる音が聞こえた。
『…っ…アスラン…アスラン』
「…あ、ユウコ…大丈夫、ここにいるよ」
「……“アスラン”」
「…っえ?」
ジョセフは突然僕を抱き締めた。
「な、っなに…?」
「お前の愛を、信じてる」
「…ジョセ、」
「では、…おやすみ」