ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
ここにきてかなりの時間が経った。手渡された小説も頭に入らずさっきから僕の心は全く落ち着かなかった。
嫌な予感というか、ユウコが僕を呼んでるような気がして何故かソワソワする。
大丈夫…ジョセフが部屋を見てくれているんだから、何も起こらない。帰ったらまたユウコとモールス信号を当てるゲームをしよう、今日はいつもより強く抱き締めて眠ろう。僕は前向きな思考に切り替えるために必死だった。
「…どうしたアッシュ。落ち着かないな」
「パパ、まだ…?」
「ああ…思っていたよりも連絡が遅い…退屈かね?」
「…退屈、というか…」
「っふ、ユウコのことか?」
「…どうして?」
「お前がそんなに難しい顔をしている時は、大体あの子絡みではないか」
「あの…パパ…お願いがあるんだけど、ジョセフに電話をかけて貰えないかな?」
「ジョセフに?何故?」
「ちょっとだけでいいから」
「…まあ良いだろう…………私だ…アッシュがお前に電話をかけろと言うものでね…あぁ、…ん?お前は今どこにいるんだ。…何故?……誰の指示で?…いや、私はそんな指示は出していないが。…私たちはまだクラブ・コッドだが……なんだと?」
…なにを話しているんだろう。
ジョセフは部屋の前に立ってくれているはず。
「…ユウコに…?」
「っ!ユウコ?…パパ、ユウコがなに!?」
僕は座っていられずディノに駆け寄る。
「あぁ、わかったこれから向かおう……アッシュ、ユウコの様子を見に行こう」
僕たちは部屋を出て駆け足でエレベーターに乗り込み下の階へ向かう。
「ユウコになにかあったの…!?ジョセフは…?」
「ジョセフは、マークという私の部下に嘘の指示を出され30分ほど前にここを出ていたそうだ」
「マーク…ってクリスの?…っな、なんで…ジョセフ…!」
エレベータードアが開いて、部屋に目を向けると例のマークが僕らの部屋の前にいた。
「…っ…パパ…!?な、何故!?」
「貴様、ジョセフに嘘の指示を出したとはどういうことだ!」
「…パパ!早くドアをあけて!」
「貴様の処分はあとだ、あとでしっかり全て聞かせてもらう!」
ピッピッピッピッ
ピー
ロック解除の音が響くのと同時にドアを開けて中に入る。