ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『ぁ゛……っ!!!』
ガシッと首を掴まれてベッドに馬乗りになって絞めつけられる。
息が…できない、
このままじゃ死んじゃう…
半分意識が飛びかけた時、その手がパッと離された。
『…っ…ゔっ…ごほッ… うぇっ…はあはあ…!』
「……前に言った通り、殺してやろうと思ったけどやめた」
『…ぅ…ッ』
「殺したらお前の苦しみはそこで終わっちゃうもんね…?」
クリスは息を荒くする私をそのままにテーブルに置かれたフルーツバスケットからナイフを手に取って戻ってきた。…刺される?!
『っ!……クリ、ス…』
「…俺ずっと嫌いだったよ…お前のこと」
段々と縮まる距離に、ヒュッと喉が鳴る
「特に許せなかったのは……これ」
クリスの手が私の顔の横を通って髪の毛を掴む。
『……!』
「…アッシュはお前の髪をすごく気に入ってるみたいだった。優しく指で梳かれて…お前も嬉しそうな顔して…ッ…ほんと、これを見てるとすごくイライラするッ…こんな不気味な色をしてるくせに…アッシュはこんなののどこがいいんだよ!!」
『…ぃ…たっ…』
「こんな忌々しいもの…こうしてやる!!!」
ザクッという音と共にハラハラと黒い髪が舞う、クリスの手には私の髪の毛の束があった。
『…あ…っ…ぁ』
…恐る恐る自分の頭に触れてみると右側だけ耳の辺りまで短くなっている。アスランが好きだと言ってくれた私の髪が…。
「っふふ、似合ってるよ…アッシュはさぞ幻滅するだろうね!…死ぬより、生きてることの方がずっと苦しいんだよ…お前には俺よりもっと苦しくて辛い思いをしてもらわないと…っ!…ねぇ、ユウコ…俺、こんなことよりももっとお前が苦しみそうなこと知ってるんだ。…それは…“アスラン”と離れ離れになること、…そうでしょ?そしてそうさせる方法は…」
『……』
「…セックス、だよ」
クリスはそう言ってナイフと私の髪をベッドに置いて、シャツを脱ぎ捨てた。
「ユウコ、今から妊娠して」