ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
「……っはぁ、イク…ッ」
口の中にあの液体がビュルビュルと放たれる。やっと終わった…ぼうっとのぼせた頭でそう思う。
『…ッんン……あ』
「見せなくていいよ気持ち悪い、さっさと飲んで」
『…ん゛っ……っはぁ…はあ…うぇっ…』
濃い…まずい…
苦い…気持ち悪い…
今日はあの時よりも乱暴だった。髪の毛をぐしゃぐしゃに掴まれて、腰を振って喉の奥に何度もそれが当てられる。嘔吐いても止まらないその動きに涙もよだれもダラダラと流れた。
「…っふふ、汚いな…苦しい?」
『…っげほ…ッ…う』
「……次は…」
『…ッ!』
まだ次があるの…!?
私の体がビクッと反応して後ずさる。
…怖い、もういやだ…苦しい…
『っ…アスラン…』
「………お前さぁ、」
『っ…?』
突然クリスを纏う空気が変わった。
「…そんなに怯えてるフリをして…心では俺のことを可哀想なヤツだって哀れんでるんだろ?」
『……っえ…?』
「俺を蹴落として自分が選ばれたことに優越感を覚えて、嘲笑ってるんだろ…ッ」
哀れんでる?…優越感…?全く身に覚えがない上に、クリスの言っている意味が分からなくて私は黙ったままクリスを見ていた。
「…アッシュのことだけじゃない。俺が、今の“クリス”を築くために…どれだけ努力してきたか…お前にわかる?…自分の居場所はここしかないって、ここから堕ちたら終わりだって…恐怖に怯えながらもずっと…ずっと耐えてきたのに…それをどうしてお前なんかに滅茶苦茶にされなくちゃいけないんだよ!!」
私が…?
『わた…し、なにも…してな』
「っ!!…なにも…してないって…?嘘つくなよ…」
スっと顔を上げたクリスのブルーの瞳には表情がない。
「最近パパがお偉いの所に連れていくのは…俺じゃなくて、お前だろ!パパにどんな手を使って媚びたんだ…?メスになんか今まで興味も示さなかったあのパパを、お前はどうやって騙したんだよ!!」
『だま……ゔぇッ!!』
リードを引かれる
「…早く言えって、今までパパがメスを連れていくなんてこと1度もなかったんだ…ずっと俺がその位置にいたんだよ!!!」
『ゔッ…ゲホッ!!…ァ、アスラッ…!だずげ…で!!』
「……アスランアスランうるさいよ…やっぱりお前、すごくムカつく…」