ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
クリスの部屋にはじめて行く前にしたキスよりも、もっと深く感じた。
私はクリスに教えると言ったアスランのキスを思い出していた。
クリスの体が後ろに反るくらいに力強くて、アスランは至近距離でクリスの目をじっと見つめていた。ちゅくちゅくという唾液の混ざり合う音、何度も吸うように絡める舌、ぎゅうっと抱き締めて隙間がない程に密着した体…クリスは五感の全部でアスランを感じたのだろう。
それを、羨ましい…なんて思った。
きっとアスランがあんなふうに私にキスをしてくれるのは発作がひどい時だから、私の記憶には残らない。
…でもさっき私は、アスランを真似たクリスのキスを受け入れようとしていた。あれはもしかしたら私の体があのキスを覚えていたからなのかも…。
アスランが今みたいなキスを、
私に…
ドクン
『……っ!…』
どうしよう
発作だ……っ
段々と呼吸が荒くなる私をクリスは口の端を上げながら見下ろしている。両腕をベッドに縫いとめられていて動くことが出来ない。
「…へえ?これがアッシュのいう“可哀想”な状態?俺には発情したメスにしか見えないけど」
『…は、…あ…っ』
「ねえ……お前今なに考えてたの?」
『…はぁ……っ』
「俺とキスして“アスラン”のこと考えた?」
クリスは私の発作のこと面白がってからかっているんだ。
『……おねが…っ…て』
「なに?」
『……でて…って…ッ…おね…が…い』
「…は?出ていくわけないだろ、こうなるのを待ってたんだから。お前は俺が考えもなしにあんなキスをしたと思ってるわけ?っふふ…笑わせんなよ!」
『…っ!』
「俺はあの時アッシュにお前の発作のことを聞いてからずっと、どうやって利用しようか考えてたんだ…!」
利用…?
「…アッシュみたいな人と生きてきたヤツにいうのもなんだけど、俺も結構賢いって言われるんだよ?いつかの為いつかの為って色んなことを耐えたし、好きでもない馬鹿な男に媚びたりもしてきた」
『…はあ…はぁ…ッ』
「そのおかげで今日やっとお前と2人きりになれた、俺の思ってたいつかは今日だったのかもしれない。今日のことを知ればきっとアッシュはもう二度とチャンスはくれない。だから…ユウコ、
今日、いっぱい苦しんでね?」