ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
「そうやって甘えた声を出して今まで男をたらしこんできたのか?…全く、そんな手は俺には通用しないぞ!」
『ッた…助けて…ったす、けて…アス、ラッ…』
ベルが鳴り、マークがドアを開けるとそこにはあのクリスがいた。
『……っ!!』
どうしよう…怖い…
『……だ…だれか…』
「マーク…っ…怖いよぉ…」
「大丈夫さ…俺が守ってやるから」
「…うん、ありがとうマーク。…ユウコ、キミと会うのは正直怖くて嫌だったんだけど…話をしないとと思って…ここにきたんだ」
…え?
涙をポロポロと流すクリスを見ていると、クリスは袖で涙を拭って意を決したように話し始めた。
「…そっか…そう、だよね…やっぱり2人じゃないと嫌だよね…マーク、ちょっと外に出ていてくれる?」
「外?いや、だめだ俺は2人きりになんて…」
クリスはマークに抱きつきキスをした。
「…っン…!」
「…はあ…ッ…ん……少しだけだよ…こういうのはちゃんと話をしておかないとあとで怖いことになるかもしれないし…それに、僕はマークのことが1番大切だから…それをちゃんとユウコにわかってもらいたくて…」
「…わかった…何かあったらすぐに呼ぶんだぞ」
マークは私を睨みつけながらドアを開ける。
『ま、まって…っ』
「ユウコ」
クリスが静かな声で私を呼んだ。
「…いいよ?そんなに逃げたいなら逃げなよ…ほら」
クリスはまだ頬に涙が残る顔でニッコリと笑って開いたドアを指した。
『……え?』
「言っておくけど、パパには報告するよ?そしたら、ユウコはこれからどうなっちゃうんだろうね、約束を破った悪い子は…ここにいられるのかな?」
『………っ』
そうだ、廊下にはジョセフが…!
『…ジョ…セフ…ッ…!』
「っふふ…あの人はいないよ、マークが追い払ったから…あーあ、今のが最後のチャンスだったのに…本当にユウコは…おりこうさんだね。
…っ…マーク、ドアを閉めて…?」
「…ああ」
バタン
「はぁ…ほんと簡単…」
目の前のクリスはボソッとそう呟いた。
「やぁ…元気だった?」