ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『・・ ・-・・ --- ・・・- ・ -・-- --- ・・-』
私は何度もベッドサイドランプの紐を引いていた。
あの時からずっと練習していたから、もう体に染みついている。
ーーI LOVE YOU
もう一度アスランの前でやってしまったら、今度は確実に伝わってしまう。
クリスとあの約束をして、私はアスランに気持ちを伝えることすら許されなくなった。…ただのペットは愛してるだなんて言わないから。それを言ったら本当はギュッてして、とも言ったらいけないのかもしれないけど…アスランが部屋を出ていく時はどうしても耐えられなくなってしまう。
アスランのことを思い出したら、また寂しくなってきた。まだ1時間か…いや、でも今と同じことを2回繰り返せば3時間だ!そうすればアスランに会える。
私はまたごろんと寝転んで本を手にした。
すると、
ピッピッ…とまた部屋のロックを解除する音が聞こえてきた。
さっきもそうだったけど、一体誰なんだろう…
ガチャ
あれ?…今度は開いた?
『…だれ?』
「やあ、ユウコ」
『…っ!……マーク…?』
「名前を覚えていてくれて嬉しいよ…でも、」
『……ッ』
この人が来たってことは…
私は恐怖で声すら出なかった。
「聞いたよ…ユウコは俺のクリスを好きになったんだって?」
……えっ?
「しつこくアプローチをされてとても迷惑しているから助けて欲しいと泣きながら相談されたんだ…確かにクリスはキュートで魅力的だが、人のものに手を出すのはいけないよ」
『…え……わ…わたし…っちが…』
「言い訳をするな!」
いきなり大きな声で怒鳴られて体が瞬時に震え出す。
なんで…?どうして怒るの…?
「…こんな首輪をつけてアッシュに飼われているくせに、まだ他にも男を求めているというのか?…このビッチめ!」
殴られそうな勢いに、私が反射的に頭を抱えて身を縮めると部屋の電話が鳴った。
「……あぁ、俺だよクリス…番号がわかって今中に入ったところさ」
『…ク…リス……ッ』
「大丈夫…俺がいるから、心配いらない…安心しておいで、待ってる」
おいで…?待ってる?
やっぱりクリスはここにくるの…?
『…マーク……ったすけ、て』
「はあ?」
『おねがい…っ!…たすけて…』