ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第5章 人は空を飛べるか
すっかり熱くなった心を冷ますために、傷を舐め終えた途端にパッと離れる。するとそれを見たエイジが自分の服をビリッと破いた。
「あ?」
「腕、だして。消毒が済んだんだろ?なら、出来るとこだけでも止血しなきゃ。」
エイジは着ていたシャツをピーっと破き包帯の代わりに使おうとしていた。それを腕に巻き付け結んでいく。
「…ありがとう、助けてくれて」
「……助けなかったほうが親切だったかもしれないぜ。このままじゃ少なくとも、射殺なんて楽な死に方はさせてくれそうにないからな…」
そういうと、アッシュはスっと瞼を閉じた。
「…!?おい、おい!」
『まってエイジ、寝てるの』
「つい1秒前まで会話してたのに!?」
「ボスはいつもそうだよ、寝る時は一瞬で充電が切れたみたいに動かなくなる。ただし、ユウコが傍にいる時だけね。」
「…顔色悪そうに見えるけど大丈夫かな?まぁ元々色白だけど…」
『…だいぶ出血してたみたいだし、体温下がっちゃったかな。』
私はそう言ってアッシュの近くに戻り手のひらや首の後ろに触れる。ちゃんと温かい。危惧していた状態ではなさそうなので隣に腰を下ろした。
エイジは近くにあったマットやクッションのようなものを持ってきて、起こさないように体勢を楽そうなものに変えてくれた。
私はアッシュを眺めていた。閉じられた目には髪と同じ金色の長いまつ毛がキラキラとして、薄く開いた唇が空気を吸っては吐く度に胸が上下する。
こんなに傷だらけになるまで…私は胸が痛くなった。
スキップはというと、マットに横になり彼もまた眠っていた。