ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
涙をボロボロと流すユウコ。
賭けだった。
きっとユウコはさっきのような乱暴による恐怖に支配されていて、いくら待ったところで本当のことを僕に話してはくれなかったと思う。
考えれば考えるほどに浮かぶあの日の違和感。
その中でも嘘じゃないならすぐに答えられることを質問してみると、やっぱりユウコの目はすぐに泳ぎ出して可哀想なほどに動揺していた。
あの日ユウコが僕についた嘘はだいたい分かった。
忘れ物をしたという口実。
クリスの部屋からの電話の内容。
帰ってきたユウコが言っていた“楽しかった”。
首の傷の理由。
「言わなかったんじゃなくて…言えなかったんだね…」
『…ぅ…っ、ひぐ…』
でも、1番知りたいことの真相が未だにわからない。
…2人は本当に恋人同士なのか。
これも嘘であって欲しい、けど…それが嘘だった場合のメリットは一体なんなのだろう?どんな理由があったらそんな嘘をつく必要があるんだ?
聞き出す方法も色々考えてみたけど、ユウコを傷付けてしまう可能性もあることに気が付いた。
…もう余計なことを考えずに、向き合いたい。
だって、今回のことでよく分かったんだ…。
例えどんなことがあっても、僕はユウコを手放すことは出来ないって。
「ユウコ…答えはYesでいいんだけど…」
『…っ…ん?』
「クリスに会いたい?」
『…ッ…!…』
あぁ、そうか…。
僕はユウコの表情を見てそう思った。
どんな理由があったとしても僕はクリスを絶対に許せない。
小さく震えるユウコにたまらない気持ちになって、ぎゅうとキツく抱き締めた。
キミは…
「…キミだけは、僕が守る」
『…ァ、スラン…』
「今までも…これからも、僕が絶対に守るから」
『…っ』
「僕のこと…信じてくれる?」
『……う、ん……っ』
ああ…キス、したい…
でもユウコはクリスにひどいことをされたばかりだから…僕は頬にチュッとキスをした。
『っ……あ』
驚いた顔をしてすぐに紅くなるユウコが可愛くて、親指を唇に滑らせてもう一度抱き締めた。