ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「……ユウコっ!!!」
滑り込むように駆け寄った僕はリードを引っ張るクリスの手を掴んだ。
「…っ!?…アッシュ」
「やめろ!離せ…っ!!」
クリスの手からパッとリードが離れる。
「ユウコっ!大丈夫!?」
『…っゲホゲホ!…ぅ…アス…』
ユウコを抱き締め、首を撫でているとクリスの笑い声が響いた。
「…あはは!」
「!?」
「トイレ早かったね!急に走ってくるんだもん、俺びっくりしちゃった!それに勢いよくドアにぶつかってなかった?あれ痛かったんじゃないの、大丈夫?」
あまりにもいつも通りなクリスの振る舞いに僕は言葉を失う。…やっぱり僕の勘違いだった?いや、違う…腕の中のユウコはこんなにも震えている。
「…アッシュどうかした?」
「どうかしたじゃないよ…っ!今キミ、ユウコの首を絞めていたよね?何をしているの!?」
「っ…やだなあ、アッシュ!これは躾だよ」
「……し、つけ?だからユウコはペットじゃないって言ったろ!?なんでこんなにひどいことを…」
「はぁ?……というかさぁ…俺からしたら今2人がそうやって抱き合ってることの方がよっぽど“何をしているの”だけどね!?アッシュ、ユウコは俺の彼女なんだよ!アッシュに口出しされる筋合いない!…だよね!?ユウコ!!」
『…は……ぁ…っ』
「チッ……ねぇアッシュ、よく考えてみて?ユウコは俺の彼女なんだよ?それなのに他の男にしっぽを振るなんておかしいと思わない?躾の最中に俺以外の名前まで呼んじゃってさぁ!…それがダメなことだって、わかってもらえるまで教えてやるのが当然でしょ!?…ねぇ、アッシュもそう思うよね?!」
「……」
「はぁ…躾はもういいや。ユウコおいで」
クリス…キミはどうしちゃったんだ?
そんなことをしたり言ってしまうのは今頭に血がのぼっているから?それともまさかこれが本当のキミなの?
そうだとしたら
何が原因で、いつから…?
いつもの冷静で賢いキミは一体どこに。
クリスがユウコの腕を強く握る。
『…っう!』
「いつまでそこにいるんだよ!アッシュも離して」
もう耐えられない、我慢出来ない。
「クリス…僕、ユウコを離せない」