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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷


《アスランside》

おかしい、やっぱり何かがおかしい。

ユウコが部屋に来て、ハグやキスをしているところを見ても2人が想い合ってるというには何かの違和感がある。

僕は振り返りユウコを見た。

…キミはクリスのことが本当に好きなの?

『……?』
「………っ」

僕はユウコから目を逸らし歩き始める。

そしてソファから死角になるトイレのドアを開け、大袈裟なくらいの音を立てて閉めた。トイレ内に入ったことをアピールするように。

…まだ冷静になれていない僕の勘違いかもしれないのに、試すようなことをしてごめん…でも、僕の勘違いや考えすぎならそれの証明が欲しいんだ。

「………」

僕は再びドアノブを掴み、音を立てないようゆっくりと全開までひねった。そしてそのままドアを少し開けた。


「…さない…っ」

「っ!!」

ソファにいると思っていたクリスの声は思っていたよりも近く聞こえた。同時にギッという音もして、移動した場所はベッドだと予想出来る。

部屋の家具の配置を思い出す。
…ここはベッドからもハッキリ見えないはず。

そーっと開いたドアの隙間から様子を伺う。

『…ぅ…ぁっ…!!!』
「お前はもう俺のものなんだから…俺が躾けてやらなくちゃ……ッ!」

…え…?

その光景に僕は目を疑った。

ベッドでユウコに馬乗りになったクリスは、リードをグッと引っ張ってまるで首を絞めているように見える。

『……はあ…っぁ!……ぅ!ぐ…っ』
「…苦しい…?でも…これは躾だから…っ!」


…なんだ…なにが起きてるんだ…?
ユウコ、クリス…なにをしているの?

『う゛…っ…』

「…全部、お前が悪いんだよ…!」

『…あ゛っ…す…ら゛…ンんっ!』

「うるさい、黙れ…っ!!」


アスラン…
ユウコは今確かにそう言った。

途切れ途切れの苦しそうな声で。


「………っ!!!」


ユウコが僕の名前を呼んだ瞬間、それまで根が生えたようだった足が勢いよく床を蹴った。

体がドアにぶつかってドンッと大きな音が鳴る。

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