ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
クリスはチラッと私に目線をやると、アスランの首に腕を回した。アスランはおずおずとクリスの腰のあたりに手を置く。
『……』
私はまるで話が読めていなかった。
アスランは何をクリスに話したの?
私がクリスの彼女って?
「…アッシュ、教えて?」
白い肌を紅く上気させたクリスが甘えたような声を出すと、唇がゆっくりと近付き重なった。
ちゅくちゅく…と唾液の混ざり合う音が部屋に響く。
2人の赤い舌が絡むのが見える。私は目を逸らしたいのに時折こちらに視線を向けるクリスの目が“逸らすな”と語っていた。
しばらく2人のキスを眺めて、私はふと考える。
アスランは、いつもこんなキスを私にしてくれていたの?こんなに深く求め合うような激しいキスを私に…?
『……っ』
心臓がドクンと強く鼓動する。
「……っは…ぁ」
「…っ…」
どれくらいの時間が経ったのか、クリスはようやくチュッと音を立てて唇を離した。
「すご…い…」
「苦しくない?」
「は…っ…大丈夫だよ、俺はキス下手じゃないし…俺、アッシュのキス大好き」
「…え?」
「気持ちいいよ、すごく…勃っちゃうかと思った」
「…っ!」
「…ユウコ、何かあったら俺が助けてあげるから安心していいよ…さて、ケーキ食べようか」
クリスはアスランに見えないように私の頬をギュッとつまむとソファに移動した。
「……あ、僕…ちょっとトイレ」
アスランはそう言って数歩進んだところで振り返り私を見た。
『……?』
「………っ」
なにか言いたそうに数秒見つめられたけど、フッと視線を逸らしてトイレに向かった。
なんだろう?
ガチャ
トイレのドアが閉まった音が聞こえる。
「……お前さ、俺に言うことあるだろ?」
『…っ』
「黙るなよ…嘘ばっかり吐いといて…」
『…嘘って…?』
クリスが引きずるようにして私をベッドに押し付ける。
『…ひっ…』
シャツのボタンを外され肌蹴させられる。
「アッシュ、これのこと知ってたよ」
『え…っ!?』
「なんで?」
なんで…アスランがこれを…?
私にもわからない。
「…俺からアッシュを奪わないでって言ったのに、お前は…っ…可哀想なただのペットでいてくれるって言ったのに…!」
『ま…って、クリス…』
「俺の名前を呼ぶな!…許さない…っ」