ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
明るい声で私を招き入れたクリスの表情を伺おうと顔を上げようとした時、突然ドンッとドアに体を押し付けられた。
『…っ!?』
そして私の顔の横に肘をついて閉じ込めるような体勢にすると、鼻と鼻がくっつきそうなほど近くから私をキツく睨みつけた。
少し離れたところから、アスランの心配するような声が聞こえる。
クリスは私の耳元に近づけて小声で話した。
「…お前、よくも俺に嘘を吐いたな」
『…っ!!』
「全部、聞いた」
『な、なにを…っ…?』
「許せない…嘘つきの悪いメスめ…!」
「…っ、クリス…何の話をしているの?」
「うん?……ねぇ、ユウコ…1人で寂しくなかった?アッシュからユウコの発作のことを聞いたよ…俺心配でユウコを1人にしておけない」
クリスは私をギュッと抱き締めた。
え…?
『…っあ…』
戸惑っている私の顔を押さえつけて、クリスは突然キスをしてきた。
『…っん…ぅ…っ!』
「……っ…ん…」
一瞬何が起きたのかわからなかった。
どうしてっ…!?アスランがいる前でキスなんて…クリスはアスランのことが好きなんでしょ?
私はパニック状態になる。
「ちょ…クリス……!」
「…っは…ぁ…なにアッシュ、俺が自分の彼女にキスしちゃだめなの?」
『…?!』
…かの、じょ?
今確かにクリスはそう言った。
どういうこと?
「…そうじゃないけど、ユウコが苦しそうだったから…」
「ユウコはキスが下手だから息継ぎがまともに出来ないんだよね?」
『…ご、…ごめんなさい』
咄嗟に謝ってしまう。私は表向きはニコニコしているこの目が怖い。
「っはは、別に謝らなくていいよ。そういえば、発作が起きた時はアッシュにキスしてもらってたんだってね?それはどんなキスだったの?」
『…え』
「ほら、ちゃんと俺に教えてよ。そうしないといざという時に助けてあげられないじゃん」
そう言って再び私の頬に手を滑らせた。
『………っ』
「…ねえ、ユウコ?」
その時、アスランがクリスの腕を掴んだ。
「ま、まって!…僕がキミに教えるよ!」
「…え?」
「ユウコはキスが下手でしょ?…だから、僕がいつもキスをリードしてたんだ…だから僕が…」
「……わかった…いいよ?」