ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
そっか…ユウコの発作のこと、クリスにはちゃんと伝えておかないと…。
「あのね…僕たちここの建物に連れてこられる前、倉庫みたいなところにいたんだけど…そこでディノの手下の男たちがユウコに変な薬をたくさん飲ませてたんだ」
「…変な薬?」
「そう、媚薬っていう…性欲を強制的に高める薬なんだけど、その副作用で今でも時々発作が起きるようになっちゃって」
「媚薬…え、発作ってそういう?」
「…息が荒くなって、顔が紅くなって涙目になって…ほんと、可哀想なくらい」
「……それで?」
「発作が起きると、その熱が治まるまで…キスをするんだけど」
「…えっ、キス?…アッシュが?」
「あ…うん」
僕は、あの時ディノにされた話をかいつまんでクリスにした。薬を飲ませてた男たちはユウコをセックスの道具にしようとしてたこと。そいつらはディノが殺したからもうこの世にいないこと。このままユウコの熱を放置したら、今度こそ誰かに本当の性玩具にされてしまうと言われたこと。
そして、
…僕がユウコの性を管理するよう言われたこと。
「…ユウコがクリスに言ったのは、ディノがいいって言った僕とか…あとは分からないけど、それ以外の人とはキスとかそういうことをしちゃダメって話。…クリスはユウコの…恋人なんだから問題ないだろうけど…」
「……へえ、いいこと聞いた」
「え?」
「あ、……いや?発作なんて苦しいだろうね」
「そうなんだ…とても辛そうで、僕まで苦しくなるよ」
「もし俺といる時に発作が起きたら、俺がなんとかしてみせるよ。…あ!そうだ、ユウコをここに呼ぼう!ケーキもたくさんあるしさ」
クリスは突然そんな提案をしてきた。
2人を前に僕はちゃんと普段通りにいられるかな…。
「…ほら、1人の時に発作が起きたら大変じゃない」
クリスは優しい…。
どんなに時間が掛かっても受け入れていかなくちゃいけないんだ…。
「…うん、そうだね」
「じゃあ俺、マークに電話してくる!」
クリスは電話の元へ走って、コールした。