ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
クリスのものだという証…
一瞬焦ったような顔をしたのに、さも何もなかったかのようにクリスはそう言った。
「……」
「ユウコにね…お前は俺のものだよって印を付けたんだ。そしたらそれが嬉しくて泣いちゃったんだよ、ユウコはよっぽど俺のことが好きみたい」
そう、なんだ…
ユウコはそんなにクリスのことが…。
「アッシュ、今までユウコのことを守ってくれてありがとう!でももう、大丈夫だから」
「…………」
うん、と言おうとしているのに僕の口が言うことをきかない。
「これからは俺がユウコを守るよ、ユウコもそう望んでるし」
ユウコを守るのは僕じゃない。
ユウコがそう望んでる。
「……そ、っか」
僕がやっとの思いで頷くと、笑顔だったクリスは突然眉間にシワを寄せて握った拳を震わせた。
「…っ…そんな顔をするくらいに好きなのに、どうして諦められるの!?…俺だったら絶対に嫌だ!身を引くなんて絶対に出来ない。好きな人が誰かのものになるなんて耐えられないよ!俺だったらどんなことをしてでも阻止する…!」
クリスは何を言ってるんだ?
そんなことを言って、キミは僕にどうして欲しいのさ…嫌だと言って欲しいの?そんなわけないくせに…!
「だって…ユウコはクリスを好きなんだから、僕が嫌だと言ったってどうにもならないじゃないか…!ユウコが幸せでいられるなら僕はその方がいい…それにクリスがユウコを守ってくれるんでしょ…?僕よりも頭が良いクリスなら、その、安心…できる」
「………」
「人の気持ちは操れないんだって、前に一緒に観た映画で言ってたよね…僕もそう思うんだ」
クリスはなんとも言えない表情をしていた。
まるで僕の考えがおかしいとでも言いたそうな。
「僕、おかしいかな…?」
「…いやおかしいのは…いつも俺なんだ」
「クリス…」
「っはは!そんなマジな顔しないで?…せっかくだからユウコのこと聞いておこうかな」
「…なに?」
「熱を分かち合うってどういう意味?」
「え?」
「ユウコが言ってたんだ。いいよって言われた人以外と熱を分かち合っちゃだめって。パパからそう禁止されてるって」
…ユウコの発作のことか。