ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「…ごめんね」
「っ……そのごめんって、なに?…ユウコを好きでごめん?それとも、俺なんかにはユウコを渡せないごめんって意味?」
「…そ、そんなっ!…僕がユウコを好きってキミに」
「やめて、聞きたくないってば!」
クリスは心底動揺していた。
そして同時にひどく苛ついた様子だった。
なんだか異様な空気だ。
その異様な空気を作ってしまったのは間違いなく僕なんだけど…。
でも、全部本音だった。
ユウコのことを本当に好きなら傷付けないで欲しい。いちばんに優しくしてあげて欲しい。
…ユウコを泣かせないで欲しい。
「あのさ」
しばらく黙っていたクリスが突然口を開いた。
「…な、なに?」
「ユウコがペットじゃないなら、2人はどんな関係なわけ」
「え…キミ、ユウコのこと」
「いいから、…どうなの?」
クリスの静かな圧力に負けてしまう。
「ぁ…僕たちね、実は4歳の時からずっと一緒にいる幼なじみなんだ。色々あって2人で家と故郷を捨てて、どんな時もいつも一緒にいて…」
「…あの首輪は?アッシュの趣味?」
「ちがうよ!あれは…ディノが…」
「…あぁ。いつから好きなの?」
「…初めて会った時…かな」
「…へえ……じゃあさ、もし今ユウコに好きって言われたらどうする?」
「え…?考えたこともなかったな…すごく嬉しい、けど…ユウコが僕を好きになるなんてありえないことだから」
「……え?」
「ユウコにとって僕はただの幼なじみの友達なんだ。でも…いい、それで。…傍にいられるなら」
ユウコに僕を好きになって欲しいとは考えたことがあるけど、ユウコが僕を好きと言ったらなんて…そんなの夢の中でしかありえないことだ。
「………ふうん…そっか……変なの…」
「……ひとつだけいい?この前、ユウコ泣いていたよね?あれはどうして?」
「……え、と」
「クリス?」
「あっ…あぁ!1週間前のこと?…嬉し泣きだよ」
「…嬉し泣き?」
「っそうそう!…さっきアッシュが言ってた胸の赤いやつ、あれキスマークだから」
「なに?キスマークって」
「やだな、アッシュ知らないの?
…俺のものだっていう証だよ」