第14章 消えない傷

《アスランside》

｢……は…？｣

｢…言ってくれてたら、僕に隠れてコソコソ会う必要もなかったんじゃないの…？！｣

｢ち…ちがうよ…俺はアッシュが…！｣

｢ちがう？なにがちがうの？…キミは1週間前、僕が留守にしている隙を狙ってユウコに会いに来たんでしょ？｣


｢……っ…ねえ、なんで俺が部屋に行ったことをアッシュが知ってるの…？｣


その時、ユウコの胸に付けられた痛々しい赤い痕が頭に浮かんだ。


｢…僕、見たんだ｣

｢なにを…？｣


僕は自分の鎖骨の下をトントンと指で叩いた。


｢…っ！｣

僕はまだどこかであれは何かの勘違いだと思っていたかった。
でも、そのクリスの反応は肯定だ。



｢…あぁ、やっぱりあれはクリスがつけたんだね…？あの後部屋に戻って、寝ているユウコを眺めていた時にボタンにキミの髪の毛が絡まっていることに気づいたんだ｣

｢…髪の毛？｣

｢そう…それを取る時にボタンを外して、あの赤い痕を見つけた。…ねぇ、クリス…ユウコのことが好きなら、ユウコを大切にしてあげてよ…！｣

｢……｣

｢僕にはあれがなんなのかわからないけど、ユウコに痛いことをしないでほしい…、ユウコのことが好きなら、そういうことからユウコを守ってあげてほしい！｣

｢……なんで、そんなっ…｣

｢本当は、これからも僕がずっと守っていきたいんだ…だって今まで、ずっと…ずっとそうしてきたから…｣

｢……｣

｢でも、もう僕には出来ない…ユウコが選んだのはキミだから…｣

｢…アッ、シュ…あの！｣

｢ッ…クリス、こんなこと本当はキミに言うべきではないのかもしれない…けど、｣

僕はクリスの目を見た。



｢僕…ユウコのことが大好きなんだ…昔から｣


｢…………………｣

クリスの目が、表情がどんどん変わっていく。
そして立ち上がり僕に背を向けてしまった。


｢クリス…ごめ｣
｢っ…ははは！な…んだよそれ！…ほんと、そんなの聞きたくなかった…っ！｣

クリスの声が震えているように聞こえた。