ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第5章 人は空を飛べるか
『後ろ手に縛られるって、思ってたよりも痛いでしょ?肩バキバキになるし、縄が擦れて皮膚も痛いし…』
私は先程切った腕の傷をぺろぺろと舐めながらそう言う。
「あぁ、って…舐めときゃ治るとは言ってたけど本当に舐めるんだね」
そう言ってエイジは肩をゆっくり回し、両手をプラプラとさせる。
「ユウコは傷が出来るとよく舐めてるよね」
『唾液には殺菌効果があるんだって、舐めると早く治るって小さい頃に教えてもらったの。』
「キミたちは…その、拘束されたり殴られたり…慣れてるの?」
「エーチャンにはオレたちがどんなふうに見えてるか分からないけど、毎日こんな目に遭ってるわけじゃないよ!それにこんなこと、頻繁にあってたまるかあ!」
「…そっか、少し安心した。ところでアッシュはどうしてるかな、僕でもこんなに心配なんだ。キミはさぞ心配だろうね…」
『……うん』
私が遠い目をして静かにそう答えると、それを見たエイジはこの空気が耐えられないと言うように話を続けた。