ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第5章 人は空を飛べるか
車でどれ程の場所まで連れてこられたか。エイジの隣の男は、すっかり血溜まりを作っていた。私を抱える男の肩越しにバイクを飛ばしフルフェイスの下でこちらを鋭い目で見ているだろうアッシュの姿を1度だけ見た。
これは罠だ…
どこかへアッシュをおびき出す為の。
その餌に私たちは使われた。
来ては駄目だと心では叫ぶのに、危険を承知でそれでも私たちを見捨てることの出来ないアッシュを誇らしくも思う。
「降りろ」
運転席の男がそういうと、私は1番先に車の外に放り投げられる。そして相変わらず私たちを拘束した。少し歩いたところで見覚えのある男が目に入る。
『…オーサー?』
「よお、山猫のお姫様。こっちにきてもらおうか」
そこは倉庫のような場所で1箇所だけシャッターが開いていた。その中へ連れ込まれる。そこにはたくさんの男たちがいた。男たちは私をその目に捉えた瞬間、妙な歓声をあげて体中を舐めるように見てきた。
その中で一際恰幅のいい男が私に近付いてくる。その男を見た途端、私は足がすくみ動けなくなった。
「よお、ユウコ…。へっ、イイ女になりやがって…」
『マ、…っ』
「ユウコ?大丈夫」
私の様子に気付いたエイジは拘束されながらも私に寄り添ってくれる。
「アッシュはよくパパ・ディノの元に顔を見せるが…お前はあれ以来だな。…その様子を見るに、お前は従順に躾られたメスのままだ、嬉しいぜ…なぁユウコ。」
ダメだ、ダメだ…
目がチカチカする…足も動かない。
「おい立てよ」
足がガクッとした所でオーサーに肩を掴まれ立たされる。後ろでシャッターが閉まる音がした。