ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第4章 遠い生まれ故郷より訪問者
《アッシュside》
ユウコが一瞬震えたような気がした。誰でもそう聞かれれば一番最初に人を殺した時のことを思い出す。8歳のあの日、俺とユウコは同じタイミングで1人の男を殺した。俺は家を出る時からあの男を殺すつもりで父さんの銃を持ち出したがユウコはそうじゃない。
俺がやるから、そう思ってベッドの上でボタンを外されるこいつを見たはずなのに、俺がたどり着く前に震える腕で銃口をあのクソ野郎に向けた。
やめてくれ…待ってくれ、お前を殺人者にしたくない。でもその力の入る銃を奪う余裕もなく、こいつが…せめてまもなく眼前に広がるであろう、赤く染まる《物言わぬ人形》を見ないで済むことだけを考えて。俺たちは同じ運命を共に背負った。
ふとユウコの目を盗み見ると…
ほら、お前のそんな目はもう二度と見たくない。
もう二度とお前のこの手で人を撃って欲しくない。
もう二度とお前が人を撃たなくても生きていけるように俺が必ず守るから。
自身への誓いのように
「…あるよ」
と答えた。