ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第4章 遠い生まれ故郷より訪問者
《アッシュside》
カウンターに座り、俺の勧める酒を口にするユウコを見ていると目が合った。今日もそれ飲んでんだな、そう考えているとカウンターチェアをくるっとさせてこっちに背を向ける。
なんだ、酔ったのか?
カウンターに突っ伏すユウコにここでよく会う馴染みの男が声を掛けている。あいつユウコに気があんのかよ…。ガハハと笑う男をじとっと横目に見ながら、球を打った。
扉が開く気配がしてそちらに目をやるとスキップがいた。今日はジャパンから俺たちの話を聞くために人がくると聞いていた。ジャパンといえばユウコの生まれ故郷だ。そう思うと何故か無碍にできなくてYESと答えてしまった。
慣れない英語で自己紹介をしている男とその息子のようなやつ。虫も殺さないようなナリしてこんな場違いな所によく入ってきたもんだ。
ユウコは同じ日本人だからなのか少しいつもよりそわそわしている。彼らが話す日本語に随分真剣に聞き入ってたくせに、なんて言ったのかと聞き返している姿におかしくなる。
「君たちのことを…聞きたいんだけど」
何を聞きたいんだ…俺たちの何に興味を持っていやがる。ストリートギャングのボスってヤツはそんなに他人から好奇の目に晒されるのか…
「で、何を聞きたいんだ?」
「あ、その前に写真を撮ってもいいかな?」
咄嗟にユウコをスキップに預けた。こいつら本当に何なんだ?ウィークポイントでも探りに来たのか?写真1枚が出回るだけで俺たちにとっては命取りだ。俺だけならまだしも、こいつの写真が出回れば厄介事が確実に増える。
「彼女も写真に入って欲しいんだけど…」
「あいつをそのカメラに写すっていうなら、あんたからいくら貰えばいいかな」
そういうと慌てた顔をして謝罪した。無理強いするようなタイプには見えなかったから軽い冗談のつもりだったけど、全く伝わらなかったらしい。