• テキストサイズ

ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第4章 遠い生まれ故郷より訪問者


店に残してきたアッシュは大丈夫だろうか?彼ならきっと大丈夫だと頭では分かるのに、後ろから彼の叫び声が聞こえたような気がした。出てくる前にひと目、顔を見てくれば良かった。こういう世界に身を置いて痛感している、明日が来るのは当たり前ではないと。

いや、余計なことを考えるのはやめよう。今はとにかく地上に出て安全な場所へたどり着くことだけ考えよう。


「へええっこんなところから外へ出られるなんて」
『しっ』

私たちは地上へ繋がる排水溝のグレーチングを持ち上げる…と、

「いよぉスキップ、と…山猫のお姫様?」

『!?』


そこには待ち構えるように男が数人立っていた。

「…悪いな。いっしょに来てもらおうか。」

『この人は関係ないでしょ?私たち2人で』

「いや、ここにきた奴を連れてこいと言われてる、3人だ。」


私たちは簡易的に拘束されると、乱暴に正面入口付近に停まっていた車に連れ込まれる。


「ユウコーっ!!!!」


エイジとスキップが押し込まれ最後に私という所で、今1番聞きたかった声が聞こえた。


ーーアッシュ…



『アッシュ…!!アッ…』

「乗れ!!いいぞ、出せ!」



キキーッ
ブロロロロロ…

車が勢いよく発車した。
狭い車内、広めの後部座席とはいえ5人がギュウギュウに乗っている。スキップは座席の足元に、私は押し込んだ男の膝の上に抱えられる。


その時だった



ド、キュウウウウン


そんな音が聞こえたかと思うと、エイジの隣に座っていた男の頭が撃ち抜かれた。血が吹き飛ぶ。

「ジャック!!」

仲間の男は取り乱す。

動いている車に、しかもこの男の頭をピンポイントに撃ち抜けるのは彼しかいない。

『……アッシュ』

「ジャックがやられたぜ!!」
「分かってる静かにしろ!!ちくしょう!なんてヤツだ!!」


そうだ、エイジ…日本で生まれ育ち、つい先程生まれて初めて本物の銃を触った彼がこんな場面に居合わせるなんて酷すぎる。

彼を見ると、あわあわと撃たれた男を見たあとギュッと目を瞑り、見たところ平静を保っていた。すごいな…普通の人だったら取り乱して泣き叫んでもおかしくないのに。


『(えいじ…大丈夫だから)』

「(…っ!…あ、あぁ…ありがとう)」


異国の地でこんな目に遭ってしまった彼に少しでも安心を、と日本語で。

/ 729ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp