ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第4章 遠い生まれ故郷より訪問者
「すごいなあんた、オレ見直しちゃったよ」
「なにが?」
「アッシュが他人に銃を触らせるなんて初めてのことだぜ!」
「え…そうなの?」
「あぁ、そうさ!以前酔っ払いがふざけて銃に触ろうとして、指が吹っ飛ばされたくらいだ!ね、ユウコ!」
『あぁ〜、あったね、そんなこと!』
「アッシュはあんたが気に入ったみたいだ、良かったじゃないか!オレも紹介したかいがあったぜ!あらためて宜しくな、オレはスキップ!スキッパーって呼ばれてる」
「ぼくは、エイジ。エイジ・オクムラ」
『………』
久しぶりに見るなぁ…日本人のこの、目の色。
鏡を見れば見慣れたものだけど、こんなに近くで自分以外の日本人の黒をまた見ることになるなんて。エイジ・オクムラか…どんな漢字なんだろう、オクは奥…ムラは村かな…。日本にいたころはまだ漢字を習うような年齢ではなかったので勉強したのはケープコッドに来てからだった。パパが漢字ドリルを日本から取り寄せてくれて、母国語も大事にしなさいと学ばせてくれた。漢字を習うにはまだ早すぎる年齢だったけど、どんどん新しいことを覚えるのは嬉しくて捗った。あぁ……パパ…か。
『奥村…えいじ』
「…えっ?今」
『…っ!あ、ごめん、私も改めて。ユウコ・リンクス。ユウコって呼んで?』
「あっ…うん、」
「ちょっとユウコ〜、じっと目を見つめられてエーチャン照れて顔真っ赤になっちゃったじゃん」
「なっ、からかうなよっ」
『ごめんね、瞳の色。とても綺麗だったから。』
「…それを言うなら君も同じじゃないか、君も綺麗だよ、全部」
『…えっ』
「なに、なになにぃ?2人早速そういう感じ?!うわ〜、アッシュにチクってやろ!」
テーブルに頬杖をついてニヤニヤとこっちを見てくるスキップ
『ちょっと、スキッパー!』
「そ、そういえばユウコとアッシュは山猫の番って呼ばれてるんだってね。名乗りも同じだし、2人は結婚してるの?」
『…け、結婚!?!?』
咄嗟に大きな声が出て周りが一斉に静かになりこちらを見ていた。アッシュにも聞こえたかとチラっと見ると酒を胸の高さまで上げて私にパチっとウィンクした。