ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第4章 遠い生まれ故郷より訪問者
私は大人しくスキップの隣に行き、アッシュたちの様子を見ていた。
「アッシュは咄嗟にユウコを写真から外したね。顔が割れてユウコが危険な目に遭う可能性を潰したんだ、さすがボス!」
『そんな深い意味はないんじゃないの?』
「何言ってんだよ、いつもそうじゃん。ユウコに拳銃を持たせないのも、俺が近くにいれば問題ないからって言ってたし!」
『…それは私の銃の腕、信じてくれてないからでしょ』
「ユウコの銃の腕を信じないんだったら、誰のことも信じられないよ!」
スキップは笑いながらそう言った。私とアッシュはディノの元で同じ教育を受けた。家庭教師から戦いの指南を受けた時は、まず女だからという考えは捨てろと強く教え込まれてきた。戦いの場で女は確実に狙われる、だから男よりも確かな技を身に付けておかなくてはならないと。
私の銃スキルは、仲間たちは皆知っている。だが、アッシュだけは、私に銃を持たせてくれない。仲間たちはさっきスキップが言った理由で納得しているが、私は納得出来なかった。私だけが守られる立場なんて嫌だ、と。
そういう私にアッシュは
「いざと言う時、ガタガタ震えて引き金を引けなかったのはどこの誰だったかな?」
と随分昔の話を持ち出しながら意地悪な笑みを浮かべた。
そして、
「お前が銃を持っているから大丈夫だ、とどこかに油断が生まれるかもしれない。そんな少しの油断で大切なものを失うくらいなら、最初からこっちに余裕なんてなくていいんだよ。」
言い返す隙すら与えてもらえない物言いに、私は何も言えずに黙る。そんな私の頭にポンと手を置いて「お前はなんの疑問も持たず、ただ俺に守られていればいい。」と微笑んだ。
チラと私を見たスキップは不思議そうに、ユウコ?というので、
『今は銃を持たせてもらえなくても、“いざと言う時”がきたら皆を守れるように訓練はしておくよ!』
と言って右手をグッと握った。
あまりにキラキラとした曇りのない目で「さすがユウコ!」と言われて、不覚にも少し照れてしまう。
「オレはあんたより年上だよ!」
少し苛立ちを含んだその声を発したのはエイジだった。