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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷


《アスランside》

車に乗って少しすると、ユウコは窓の外の景色を眺める余裕が出てきたようだった。
僕らはずっと外の音が聞こえないような場所に閉じ込められていたから、正直あの車の音には僕もびっくりした。

マービンの所を出てから、とにかくこの人からユウコを守らなくちゃ、と震える足で必死に立っていた。頬を撫でられた時も体はビクッとしたし、何を考えているのか分からないような目で見つめられた時も怖くて仕方なかった。

視界の端で右隣のユウコが、こちらに体を向けたのがわかった。なんだろう、と彼女を見るとその視線は僕の左隣の男の人に向けられていたものだった。


『…パパ、』

「なんだい?ユウコ」

『ジュウジュン、って…なに?』

「従順?…どうしたんだ、突然。」

『私、…それになりたい』


ユウコの言葉を聞いて男の人は目を丸くしたあと、小さく「ほぅ…」と言った。


「……従順というのは決して逆らわない、大人しくて素直な子のことさ。なれるかい?」



『…っ……はい』




「フフフ…そうか、期待しているよ。」



思い起こすと、マービンはよくユウコに従順というワードを使っていた気がする。


従順なイイコ、従順なメス…


決して逆らわない大人しくて素直な…


ユウコ…?


なんだ、それ…
何故かザワザワと騒ぐ胸を落ち着けるように握ったままの手にキュッと力を入れた。

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