ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
置かれた服を見ると、いつも支給されるものよりしっかりとした素材だった。これを着る時はもうここを出る時、そう思うと少し不安になる。
でもアスランと一緒なら大丈夫。
そう強く思える。
今までだってそうだったから。
「寝よっか?」
『そうだね!…ここで寝るの最後かあ。』
私たちはいつものように、横になり向かい合った。
「うん。僕たちずっと部屋の中にいたから、外に出るの久しぶりだよね。」
『私、この部屋の外に出るのはじめてだ…』
「あ、そっか。ユウコはここに来てからこの部屋からも出てなかったもんね、不安?」
『ううん、アスランがいるもん』
「…うん、僕がいる。」
私がアスランの手を握ると、クイッと引かれる。
近くに寄ると、あいた手で私の首筋をスっと撫でた。
『……くすぐったい』
「まだ先になるなあ…」
『まだ先って、なにが?』
「ふふ、内緒」
『え〜っ!』
「ねえユウコ、キスしていい?」
『…っ、え?』
「したいって思っても良いんでしょ?」
『うん…』
私がそう返事すると
アスランはほんの一瞬唇に触れ、ちゅっと音を立てて離れた。
あれ…?
ぽかんとしてしまう。
するとアスランは、わざとらしくあくびをして私をギュッと抱き締めて「おやすみ」と言った。
私の頬が当たるアスランの胸からは、しばらく大きくて早い鼓動が聴こえていた。