ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
すき、すき…
キスをしている時、そんなことばかりが頭に浮かんでいた。
他の人にキスされても、気持ち悪い…嫌だ…としか思わないのにアスランとのキスは心臓が壊れそうなくらいドキドキする。
今のキスは全然苦しくなかった。キスをしながらも息を吸えるようにアスランがずっと気遣ってくれた。
…気持ちよかった…アスランの舌っていつもこんなふうに動いてたのかな。
アスランがちゅっと唇を離してから私たちは、はぁはぁと肩で息をしていた。アスランを見ると、手の甲で唇を拭ってこくっと喉を鳴らした。私も口の中にたまった唾をのみこんだ。
その時、廊下から足音が聞こえてきた。
ガチャガチャ
ギィ
マービンだ。
「…あ?なんだ、そんなに息荒くして…セックスでもしてたのかよ。」
「はぁ、はぁ…ちがっ」
マービンはおもむろに私に近寄ってくると、顔をグイッと掴みまじまじと見てきた。
「…ほぅ、なるほど。こんなに唾液がたっぷり流れるまでふたりきりでキスしてたなんて信じられないぜ。ここに来た頃は唇を合わせるだけのキスで満足してたガキだったのにな。」
『…はぁ…ぅ、』
「俺の教えたキスはそんなに良かったかよ。」
『はぁ…っ』
「…お前、発情したメスの目してるぜ?」
バッと顔を離されバランスを崩すと、アスランが支えてくれる。
「まあいい。ここで過ごすのは今日で最後だ。」
『「えっ」』
「ご主人様が迎えにくるんだよ。」
「ご主人様…?」
「話したことなかったか?ここに来た時からいずれそのお方の所へ行くと決まっていたんだよ。…味見のつもりが、随分入れ込んじまった。」
「僕たちは一緒にいられるの?」
「ああ。お前たちの話をしたら大層気に入ったようで、ペアで迎える準備を今整えているそうだ。朝起きたらこれに着替えて、綺麗にしておけよ。…そうだ、ここでのことは絶対にあの方に話すんじゃねえぞ?お前らは3日前に野垂れ死にそうなところを保護したってことになってる。いいな?」
バタン
ガチャガチャ
「ユウコ、ここを出られるって!」
『でも…どこに行くんだろう…』
「大丈夫、どこだって僕らは変わらないよ!」
さっきは彼の体温に心臓が暴れて大変だったのに、今はとても安心する。『うん!』と私が微笑み返すと、アスランは私のこめかみにキスをした。