ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
『でも私、上手く出来なかった…』
「ん?」
『キスしてるとき、息が…』
マービンたちのように舌を無理に絡められているわけじゃないのに、アスランとのキスはとくにそうだった。ドキドキしすぎてしまって、呼吸すら忘れる。
今日なんて私から唇を重ねて、舌の先でしか触れてなかったのにいっぱいいっぱいだった。
「苦しい?」
『…うん、アスランとキスしてると苦しい』
「……え……ごめん」
『…あっ、ち…ちがうよ!…すごくドキドキして、頭真っ白になって…息するの忘れちゃうの!…今日も唇がくっついてからどうしたらいいかわからなくて、アスランがくちあけてくれなかったら……っ』
私がパッとアスランの方を見たら、思ったよりも距離が近くてすぐそこにアスランの顔があった。
「…あっ」
『っ、』
さっきのキスを思い出してまた顔が熱くなる。アスランの唇につい目がいってしまう。途端に心臓がドクンッと大きく揺れて、アスランに触れたいと思う気持ちがおさえられなくなる。
「…ユウコ?」
『……ア、スラン』
「え?」
『アスラン…っ』
グッとアスランに顔を近付け、唇を重ねた。
「んんっ…ちょ…ユウコ、」
驚いたように肩を押された。
『っはあ…』
「ど、どうしたの?…ユウコ、」
『っ…わ、からない…っ…』
自分でもわからない、
戸惑いや恐怖で涙がじわじわ溢れてくる。
今までにもアスランに抱きつきたくなったり、手を握りたくなったりすることは何度もあった。
でもこうして今日のようにキスしたいという気持ちが抑えられなくなることはなかった。
突然泣き出した私に、アスランはあわあわとしながらも頬を撫でてくれた。
「ユウコ、おちついて…」
『っ…こわいよ…こわい、』
「なにがこわいの?」
『とめられないの…っ』
「ユウコ…?」
『め、いれい、されてないのに…っ私…アスランと…』
「……え、僕と?」
『キ、ス…っしたい…』
言っちゃだめ、
キスしたいなんて、
こんな恥ずかしいこと…
止めようとしても、涙も言葉も止められなかった。