ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
『おも、わない…っ』
「…っユウコのばか、もう絶対あんなこと言わないで…?僕すごく悲しかった。」
『っ…ごめんね?』
「許してあげない。」
『え…?』
「なんてね、嘘。許してあげる!」
『うぅ…っ』
アスランは私の目を力強く見つめた。
「ユウコ、これから僕らはいつまでここにいることになるかは分からないけど耐えよう?希望は捨てないで、頑張って生きよう。…大人になって、ヒューゴにお酒をご馳走しなきゃ!」
『うん…、そうだね!』
「これからも僕はきみを今までみたいに守るし、今より辛いこともあるかもしれないけど、僕のために耐えてくれる?」
『…アスランのために?』
「うん、ユウコが僕のために耐えてくれるなら僕もきみのためにどんなことも耐えられるから…」
『アスラン…ありがとう、ごめんね……約束する』
「なに?ありがとう、ごめんねって!」
『………えへへ』
「ん?」
『私はアスランのために、アスランは私のために生きていくみたいで…なんだか嬉しい…』
「…みたいじゃなくて、僕はそのつもりだよ。」
『え…』
「だからユウコも僕のために生きてくれる?」
アスランのために生きる…
こんなに幸せなこと、他にあるのかな
『…もちろん』
アスランはとても嬉しそうな顔で笑った。
「今日で1週間か…」
『…1週間……あっ!』
「なに?」
私はとても大事なことを思い出した。
ここに来てから1週間ということは、私の誕生日から1週間。
つまり…
今日は8月12日だ。
『アスラン、お誕生日おめでとう!!』
「…え?……あ!そっか…!ありがとう。」
『……ぁ…プレゼント…』
「もうやだなあ、悲しそうな顔しないでよ!…僕だって渡せなかったんだから…」
『ここを出たら私も何かプレゼントする!なにがいい?』
「………僕が欲しいのは、物じゃない」
『え?なんて言ったの?』
アスランは紅い顔をして私の目を見た。
『アスラン?』
「…か、考えとく!」
大きな約束を交わした私たちが置かれる状況は何一つ変わっていないのに、とても穏やかな気持ちだった。
だけど次の日も、
その次の日も……
私たちの地獄は続いていった。