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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第13章 地獄の中へ


「さっきね、ここに帰ってくる前、ほかの部屋を見せられたんだ。」

『ほかの、部屋?』

「うん、ここの建物のこのフロアには部屋がいくつもあって、他にも僕たちみたいに閉じ込められてる子がたくさんいるみたいなんだ。」

『えっ!?』

「ここの部屋よりも全然狭くて、ベッドもお風呂もない部屋に服を着てない男の子たちがギュウギュウにいてね…暴力振るわれたり、僕と同じ酷いことされてボロボロだった。そのほかの部屋も似たようなもんだって言ってた。…でも、僕たちはいい子にしていれば、ごはんもシャワーも洋服もくれるって。」

『……なんで、私たちだけ?…』

「…よくは分からないんだけど、僕たちは希少?で最上、ランク…とかいうやつみたいで、あの動画や写真が高いお金になるらしいんだ。だからきっとそれでだと思う。…ここに来てから、随分前にトラックのなかでヒューゴが言ってたこと思い出したんだけど…」

『悪いこと考えてる大人が…とか、見てくれが…ってやつ?』

「そう!…見てくれが良すぎるってあれ、どういう意味かずっとわからなかったんだけど、悪い大人にとって僕たちの見た目がお金になるって意味だったんだってようやくわかった。」

『…ヒューゴはあの時から私たちがこうなるかもしれないって心配してくれてたんだね…、それなのに私のせいで…』

「ユウコ、それは違うよ。本来ここに女の子がくることはないんだって。それにあいつはユウコを囮に僕をここにつれてくるのが目的だって言ってた…だからユウコを巻き込んだのは僕だよ…」

『そんなこと…!』


「だから、ユウコがあの時あいつから逃げられていたとしてもどこかで僕がひとりの時に捕まって、誰にも居場所を知らされずに閉じ込められていたかも…。」


『…あっ、も…もしそうなってたら…』



「うん、もしそうなってたら…ユウコは僕が急にいなくなったって泣いちゃってたかもね?

…こんなふうに」



『…っ、アスラ…ン…っ』


「あぁもう…泣き虫ユウコ、ダイジョウブ、ダイジョウブ…ほら僕たちは今一緒にいるよ?」

『…っう、…』


「…ね?だから良くないけど…良かったんだよ。僕はこんな状況でもきみとふたりでいられるのがとても嬉しい……それでもきみはやっぱり、今も「ひとりで死んじゃえばよかった」って思う?」
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