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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第13章 地獄の中へ


傷口に固まった血を溶かすように丁寧に舐められる。
ジンジンと響くように続いていた痛みが、温かい舌に癒されていくようだった。

この痛みがずっと続かなくちゃ意味がないのに
私も苦しまなくちゃいけないのに…

アスランは、私の考えなんて全てお見通しだとでも言うように自分を傷つけないで、と悲しそうな目で言った。

一番深く傷が入るところを舐められる。

「…っは…ここ、痛そう…」

『こんなのアスランの痛みに比べたら、』

「痛みなんか比べられるものじゃないでしょ?」

『でも…』



「…ねえ、ユウコはそんなに痛くされたいの?…そこまで言うなら僕が痛くしてあげるね…?」


アスランはそう言うとゆっくり優しかった舌に力を入れて、傷を抉るようにグリッと舌を押し付けてきた。


『…い゛ッッ!!』

「痛いのがいいんでしょ?…もっと?」

『…ぁ…ッう…ごめ、んなさ…ッ!』


するとスゥッと傷を刺激する力がなくなった。




「…っはあ……僕もごめん…意地悪しすぎちゃった…」

アスランはその傷からまた流れ出した血をちゅっと吸って私に目を合わせた。


「ねえ、お願いだよユウコ…わかって?きみが痛そうにするところなんて見たくないんだ…それに僕が守ったユウコを傷つけるのは、たとえそれがきみ自身でも許せない」

『………』

「ね?」


私はアスランの真剣な目にコクリと頷くことしかできなかった。それを見た彼はいつもの穏やかな目に戻って、また優しく傷を舐めてくれた。

全ての傷を舐め終えると、アスランは私の横に並んで座った。

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