ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
『…っ…離し、て』
「…ごめんね、離せない…」
『なんで、』
「…ふたりだから」
『…っ…意味わかんないよ、』
「いっぱい苦しめてごめんね、たくさん泣かせてごめんね…でも僕は、やっぱりユウコとふたりでよかったって思うよ」
僕の腕の中で震えるユウコの背中を撫でる。
「…あの事件の後、父さんに言われたんだ。ユウコのパパから娘に会わせないでくれと言われたって。」
『え…?』
「だから僕は、もうユウコが公園に来てくれないって分かってたんだよ。」
『…でも毎日公園でまってた、って…』
「うん…それでもどうしてもきみに会いたかったんだ。あのブランコに座っていれば会える気がして。」
『…っ…』
「あの夜は月が大きくて明るかったのを覚えてる?」
『ぁ…うん』
「…僕ね、ブランコに座りながら神様にお願いしたんだ。もう他に何もいらないからユウコに会わせてください、って。こんなに綺麗な月が出てる夜はきっと神様もどこかで見てると思ったんだ……そしたら、手に何かが触れて…振り返ったらユウコがいて、幻を見たかと思ったよ。」
『…っ、うん』
シャツの胸の部分にユウコの涙がしみて、たまらなく愛おしい。
「…だからね、ユウコ。僕にとってきみは、神様が叶えてくれた奇跡なんだ。…だから僕はもう離れたくないし、何があってもきみを守りたい、こんなふうに思っちゃうのはだめなこと?」
『でも、でも…っ!私だってずっとアスランに会いたくて、あの時また会えたこと夢みたいにすごく嬉しかったんだよ…っ、いつもアスランが守ってくれるたびに私も守ってあげたいって思ってて…でも何も出来なくて。それが辛くて、どうしたらいいかわからなかった…。』
「…それでこんなことしちゃったの?」
僕は傷がつく腕をスっと撫でる。
『…ッ!』
ユウコが小さく震えた。
ほら、痛いんじゃないか…
「痛くないなんて嘘でしょ?…ユウコが僕を守りたいって思ってくれてるのちゃんと伝わってるよ、それに僕はいつもユウコに守ってもらってるから」
『…そんなことないっ!私なんか…』
「ユウコ、自分を傷つけないで…お願い。」
ユウコの右腕の傷に舌を這わせた。