ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
「………ユウコ!?なんで、誰にこんな…!」
ユウコの傷に触れないように体を揺する。
「ユウコ、ユウコっ!」
『…ん……』
ユウコは小さく唸ると目を開けた。
『…アスラン、』
「何があったの!?僕がいない間に誰かここに来たの!?」
体を起こし首を左右に振ると僕から目を逸らした。
「えっ…じゃあどうし…」
傷をよく見ると、小さな歯型だということに気付く。
「っ…もしかしてユウコ、これ」
『いやなの…』
「え?」
『アスランばっかりが痛い思いをするなんて…耐えられないの…』
「なにを言ってるのユウコ…こんな、…」
『どうしてアスランは私を守ってくれるの?』
「……どうしてって、」
『私なんか、どうなったっていいのに…』
「……ユウコ?」
『っ、どうして私なんかのためにアスランがこんな思いしなくちゃいけないの…っ!』
ユウコは大きな声をだした。
『…あの事件のあと、アスランはそれまでのこと話してくれたよね…?私、アスランに絶対…もう二度とあんな辛い思いをさせたくないって思ってた…。それなのに、こんなことになって…。ねえ、私は大丈夫だよ!こんなのも全然痛くない!どんなに痛いことだって耐えられるよ!だから私なんかのために傷つかないでよ!!』
「……私なんか、だなんて言わないでよ。」
『…っ…だってそうでしょ!?私なんか、アスランがあんなことをされてまで助ける価値ないよ……こんなことになるなら、っあの夜…私ひとりでケープコッドを出てくるんだった…まっすぐ道路に向かって街を出るんだった…ッ…アスランとの思い出なんか捨てて、ひとりでどこかで死んじゃえばよかった!!!』
死んじゃえばよかった、
傷だらけでそんな言葉を言うユウコを前に怒りと悲しみが同時に込み上げて、思わず手を振り上げた。
一瞬ビクッとしたユウコはボロボロと涙が溢れる目で、僕の力なく徐々に下がる手のひらを見ていた。
「…ばか、」
僕はそんなユウコの体を抱きしめた。