ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
私の髪を洗ってくれたアスランは、無言でバタンとドアを開けて出ていった。
手首を引く力は強かったのに、髪に触れる手は優しくて…胸が苦しかった。
私はまたアスランを守れなかった。
今日こそはと決めていたのに、
またアスランは私の為に傷付いてしまった。
目の前で苦しめられるアスランを見ているのは辛くて、その痛みを私にも分けてとずっと泣くことしか出来ない。
本当に自分が嫌になる。
アスランがシャワー室を出てからしばらく動けずにいたが、私が出ないと彼はいつまでもそのままだと急いで体を洗って出た。
タオルと新しいシャツが置かれている。
アスランが置いてくれたんだ。
それらを身につけて部屋に戻ると、ベッドに座る彼は目尻を下げた。
「僕も入ってくるね」
横を通り過ぎる時に見えた目は赤くなっていて、息が詰まる。振り返ることが出来なかった。
私がシャワー室にいる間にアスランはひとりで泣いていたの?
私には「泣かないで」とすら言わせてくれないの…?
彼の優しさがひどく胸を締め付けて苦しい。
私はどうすればいいんだろう…