• テキストサイズ

ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第13章 地獄の中へ


《アスランside》

『…ぅ、うぅ…アスラン…』

ユウコの声が聞こえて、目を開ける。


「ユウコ…?」

『ア、アスラン…っ!』


部屋には僕たちだけになっていて、男たちの姿はなかった。
また入口付近には同じように新しい服と食事が置いてある。これは毎日のことだ。




ユウコは先程の姿のまま、僕の胸のあたりに顔を伏せて泣いていた。


「…ユウコ、大丈夫?」

『大丈夫って……なんでっ…アスランばっかり痛いの…こんなのもういやだよっ…!』


さっきのことを言っているんだね。


なんでって、

だってきみに同じ思いをして欲しくないんだ。
ユウコの代わりにあの苦痛から守れるなら、それでいいんだ。


僕は大丈夫。

だから、

お願いだから…




「泣かないでよ、ユウコ…」

『…ッう…アスラン…ッ』




ユウコの頭に手をやると、いつもはスルッと指が通る髪が固まっていた。


アイツの…だ。


その瞬間、頭に血が上る感覚がした。


「ユウコ、シャワーいこう?髪洗ってあげる。」

『…っ…え?』

「早く」


下半身に力を入れると強烈な痛みに顔が歪む。

…でも、ユウコをこのままにしたくない。



ユウコの手を引いて立ち上がり、ゆっくり1歩ずつ進んでシャワー室の扉を開けた。



『…あ、アスランから洗って?それに私、ズボン…』

「いいから。」


ズボンなんて濡れても、どうせ新しいものが置いてあった。
シャワーが温かい温度になったことを確認して、ユウコの髪を濡らした。


『…げほっ、はっ…』

「あ、ごめん…下向いてて…」


自分以外の髪を洗うなんてはじめてだった。
怒りに狂いそうになる頭の中でも、痛くしないように…とだけは考えていた。


泡立てて、それを流し、
指が通ることを確認して僕はシャワー室を出た。
/ 729ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp