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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第13章 地獄の中へ


「…ごめん」

『アスランのせいじゃないよ、私が暴れて』

「これ…もう舐めた?」

『あ、ううん』

「いつも傷が出来たらすぐに舐めるのに」

『ね、すっかり忘れてたよ…』

「じゃあ、僕が舐めてもいい?」

『えっ?』

「早く治してあげたいんだ」

『………う、うん』

私は気付いたらそう返事をしていた。



アスランは私の右手を顔の前に持っていくと、とても悲しそうな目で傷を眺めてぺろっと舐めた。


『……っん』

「あっ…痛かった?…よね、ごめんもっと優しくする。」


今度は舌先ではなく、全体でゆっくりと舐められる。
チリっとした痛みは感じるがそんなことよりも恥ずかしくて堪らない。
あたたかい舌が手首を這う度に、小さく震えてしまう。


アスランはそんな私の様子を時折チラッと見ながら、左手も同じように舐めてくれた。


「…早く治るといいな」

『ありがとう、アスラン。』




「……ごめんね、ユウコ」

アスランはそう言いながら私の頬に手を滑らせる。
彼が何に対して謝っているのか分からない。


「きみを傷つけたくないのに、どうして触れたくなっちゃうんだろう…」

『…アスラン?』



「ねえ、心についた傷はどうやったら治るのかな…?体の傷は舐められても、心の傷にはできないから…」


私だってアスランの心の傷を治してあげたい。
もし直接心に触れることができたら、私の手首の傷にアスランがしてくれたように…全部全部、治してあげたい。



『心の傷の治し方、私も知りたいな…アスランの心の傷はどうやったら治る?』

「え、…僕?」

『うん、たくさん…傷ついちゃったでしょ…?』



アスランはすっと目を伏せる。
長い金色のまつ毛がグリーンを隠す。



「そんなこと……あ、でもそうだなあ、僕はこうしてユウコが近くにいてくれるだけで元気になれるよ」

『それだけ?』

「うん、ユウコが近くにいてくれるなら明日も怖くない。」


『アスラン…』


私はアスランとの距離をつめて胸に擦り寄る。
一瞬戸惑いつつも彼はゆっくりと私の背中に腕をまわした。

「いいの?…僕またきみを傷つけちゃうかもしれないのに…」

『アスランが私を傷つけたことなんて今まで1度だってないよ…それに私もアスランにギュッてしてもらえると、嬉しいから』
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