ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
「かたくない地面で寝るの久しぶりだね。」
『そうだね、公園出てからずっと地面だったから。』
「…あっ、」
『なに?』
「……僕、今朝ヒューゴの家のベッドを使わせてもらったんだった、僕だけごめん…」
『そんなの全然いいのに!それにアスランは今日いつもより長くお仕事してたってハンナから聞いたよ?ゆっくり休めたならよかった……あ、そういえば、』
「うん?」
『アスランが1ヶ月夜中に働いてた理由、今日話してくれるんだったよね?私ずっと気になってたの。』
「…あ、うん。あのね?実は…僕、ユウコにプレゼントを贈りたくて、内緒で働いてたんだ。」
『プレゼント…?どうして?』
「……こんな場所で伝えることになるなんて思っていなかったけど…ユウコ、お誕生日おめでとう。」
『…え?』
「忘れてた?今日は8月5日、きみの誕生日なんだよ。…ああ、でもね…きみの状況を聞いてからはプレゼントどころじゃなくなって、アイツの車の中に置いてきちゃったんだ…。だから、ここを出たら必ずまた……え、ユウコ?」
『…っありがとう、アスラン…嬉しい、すごく…っ』
「はは、今日はどうしたのユウコ?きみはこんなに泣き虫だったかなあ?」
『…っ…泣き虫じゃ、ないよ』
「…ん、そう?でも僕は泣き虫のユウコも可愛くてす……」
『……?』
「え?あ、ううん!ああ…ほら泣かないで」
アスランはまた私の涙を指ですくった。
しっかりしなくちゃと思うのに、彼の優しさについ甘えてしまう。
アスランの綺麗な色の瞳を見つめる。
それに気が付いて見つめ返される。
「…ユウコ、なに?」
今日10歳になったばかりなのに、一気に大人になった気がした。
『アスラン…』
すき
そこでハッとする。
危うく口にしてしまうところだった。
「なあに?」
『あ、なんでもないっ!』
私は両手を顔の前で交差して赤くなる顔を隠した。
「……あ」
アスランは突然私の両手を掴んだ。
『な、に?』
「ユウコ、これ…」
『え?』
これ、とは縛られた場所に出来た傷だった。