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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第13章 地獄の中へ


部屋に戻ると、アスランはベッドに座っていた。
目が合うと、今度は微笑んでくれた。


それだけのことがこんなに嬉しいなんて。


しかし、入口の扉に目を向けて現実に引き戻される。

そうだ、私たちはここに閉じ込められているんだ。
あの男は“明日のために”早く休めと言った。…ということは明日も同じような酷いことをされるに違いない。


「ユウコ?」

『…あ、ううん。』

目をドアから外すと、置かれているパンとスープが目に入る。アスランまだ食べてなかったんだ。
その目線を追ったアスランは、あぁと言ってそれをベッドの上に運んだ。


「食べようか。」

あまりお腹が空いていなかった。
コッペパンを半分にしたアスランは、片方を私に差し出す。

「はい、……どうしたの?」

『私お腹すいてないから、アスラン全部食べていいよ。』


「…じゃあ僕もいいや」


『え、なんで!アスランはお腹すいたでしょ?』

「前に話したじゃないか…ユウコと一緒に食べない食事は美味しくないって。だから食べない。」

『そんなのだめ!食べて!』


「じゃあユウコも食べなきゃだめ。」

『………うっ。』

私もベッドに座ってパンを受け取った。
放置されたパンは水分が飛んでパサパサでかたくなっていた。

同時に1口食べて、目を見合わす。


…美味しくない

2人ともそんな顔をした。
冷たくなったスープも交互に飲み干した。



「そろそろ、寝る?」

『…寝たら明日が来ちゃう、怖い…』

「じゃあ寝ないで話をしよう」

アスランはベッドに入って横をぽんぽんと叩いた。
私は導かれるように隣に寝転び、向かい合う。

外は汗をかくほど暑かったのに、この建物の中はなんだかひんやりとしていた。

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