ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
「……ッハァ、いいじゃねえか…気持ちいいぜッ!」
「……っ………ッ!…」
アスランからは声が聞こえなくなった。
ただ聞こえるのは男の乱れた荒い息とギシッギシッというベッドが軋む音。
アスランは8歳の事件の直後警察が来るまでの間に、あの男から今までに受けた性的暴行を時折言葉を詰まらせ、涙ぐみながら話してくれた。
「今まで誰にも話せなかったし、ユウコにだけは知られたくなかったはずなのに…おかしいよね」
と痛々しく笑った彼の顔は今でも忘れられない。
私はその時の彼の話が今の状況に一致している気がした。
もちろんその行為自体を見たことはないし、知識もない。でももしアスランがその暴行を受けているのだとしたら、何がなんでも助けたいと思った。
やめて、
もうアスランを傷つけないで。
あんな思いを二度とさせたくない。
『んんんーっ!!!』
私はできる限りの声を出し、腕に力を入れて唯一自由な足をバタバタと動かした。
『んーっ!!!!』
またギシッとベッドが沈み、男が口のテープをビリッと剥がした。
『…ッ!』
その勢いで唇の皮が切れてしまい血の味がした。
「おぅ、悪ィな。…切れちまったか。」
そう男の声が聞こえると、唇をベロッと舐められた。
「や、やめッ……ぅっあ…」
ギシッ
「…黙れ」
一瞬アスランの声が聞こえたかと思うと、ベッドが軋む。
『アスラン!?……お願い、やめて!!』
「…なんだ、ユウコ。何をやめて欲しいって?」
ギシッギシッ
「……っ……」
『お願い、アスランに痛いことしないで!』
「おいアッシュ!こいつ、痛いことしないでって言ってるぞ。お前痛いか?痛くねえよな?何も言わねえもんな?何も感じてねえんだろ!?」
「…………ッ……」
ギシッギシッとベッドが軋む音は止まらない。
『っやめて…っひぐ…アスランを傷つけないでっ!!!』
涙がまたアイマスクに染みていく。
「おいおい、アッシュのために泣いちまったのか?可愛いなァ………そうだ。」
「…っ!…なっ、だめ、やめて…っ」
アスランの声が焦ったような声を出した。