ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
なぜ動画なんか…
そもそも僕たちは何のためにこんな所に連れてこられたの?
「なんで…そんな、…えっ!それ…っ」
マービンはスマホを操作し、僕たちがキスをしている動画を見せてきた。
「人通りが少なかったとはいえ、ダメだろ?ガキがこんなこと、お外でしちゃあ。…にしても、ガキとは思えねえ手つきで驚いたぜ。」
「……どうして…」
「知ってるか?世の中にはこういうのが“趣味”なヤツらがたくさんいるんだよ。…お前らは逃げられない。もうどこにもな。ふたり仲良く地獄に堕ちるんだ。」
地獄…?
「あの方はオンナには興味がなくてな。小僧、本当はお前だけをここに連れてくればそれで良かった。」
「…でもそれならどうして!?…っなら、今からでもいい!ユウコをここから出してよ!!」
「…お前は賢そうだったからな。そいつは囮に使って、あとはソッチのヤツらに売り飛ばす予定だった…が、そうするのがもったいなくなったんだよ。……まあ、それは後で話してやる。」
ビデオを回したまま、じりじりと近付いてくる。
「な、何をするつもりなの…?」
「ああいいな、その怯えた顔。……可哀想に、震えてるぜ?」
「…ひっ」
スルッと頬を撫でられ顎を掴まれる。
ーー僕はこの目を知ってる。
この目は、あの男と同じ目だ。
僕を裸にして、
苦しくて痛いことを繰り返したあの男と。
嫌だ、怖い、
あの時の恐怖が全身を支配する。
「…や、…いや…だ」
「言ったはずだぞ?お前に“No”は許されないと。…ユウコのためならなんだって出来るんだろ?」
『………っ!?』
「………………」
「そうか、お前に出来ないなら仕方ない。」
マービンはユウコに手を伸ばした。
「…?……なんだ?」
「…………Yes…」
「……それでいい。」
ユウコに伸びた腕を掴むと、マービンはニヤッと笑ってカメラを慣れたように三脚にセットした。