ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
それから僕はヒューゴとペアになりお酒の在庫の確認と積荷の作業をした。
その最中、僕らの近況と働く理由について話した。
「そうか、元気にやってるみたいで安心したぜ。」
「あの時はありがとう、今でも時々ヒューゴの話になるんだよ。」
「…そうかよ、なんか照れんな。それにしてもあの頃からお前は大人っぽいと思ってたけど、90ドルのネックレスをプレゼントしたいなんて…お前本当に9歳かよ。」
「変かな?」
「…いや、絶対ユウコ喜ぶよ」
「…うん!」
そして、ついに…
「ありがとうございました。」
僕の手には綺麗にラッピングされた小さな箱が入る袋が手渡された。
子供だけで90ドルの買い物をするなんて不審に思われるかもしれないので、事前にヒューゴに付き添って貰うよう頼んでいた。
「良かったじゃねえか!ちなみに俺も嬉しい。」
「ヒューゴ、本当にありがとう。」
「いやいいんだよ、あと花屋だろ?」
少し多めにお金をもらったので、お花も買うことにした。
花屋は僕たちが靴磨きをする場所の近くだ。
ユウコがそこにいるかもしれない。
もし僕に気付いたら、そのタイミングでプレゼントを渡そうと考えていた。
少し歩くと花屋が見えてくる。
「…あれ?」
そこにはいつも僕たちが使っている靴磨きの道具がそのままになっていた。
「どうした?」
「いや…」
もしかしたら少しその場を離れているだけかもしれない。まだ様子を見よう。
「アスラン?お前どうした?」
「…ヒューゴ、今日は本当にありがとう。プレゼントも買えたしとても助かったよ!…ここからは僕ひとりで大丈夫だからヒューゴは家でゆっくり休んで。」
「おう。いや、それにしてもお前は1ヶ月よく頑張ったよ。こんな縁だし、またゆっくり3人で会おうぜ!その時、また話聞かせてくれな。じゃ」
ヒューゴは背を向けて来た道を帰って行った。
なんだろう、
…根拠のない不安が僕を支配する。
あたりをキョロキョロと見回すと、見覚えのある人が近寄ってきた。