ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
「えっ!?そうなの?靴磨きは?」
「あっ……あぁ、いやユウコに内緒で働きたくて」
「内緒って、どういうこと?」
「来月、ユウコの誕生日なんだ。去年もその前も色々あってお祝いできなかったから…今年はプレゼントを買いたいんだよ。…だから僕だけでお金を稼ぎたくて。」
「っ、……あのさ!私酒屋で積荷の手伝いしてるんだけど人手が足りないんだって、一緒に働かない?」
「え?!本当に?…でも昼は靴磨きがあるんだよね」
「夜中だよ!だいたい午前3時から3時間か4時間。ユウコが寝てる間に抜け出しちゃえばいいじゃん!」
寝てる間ならユウコにバレない。
「ハンナ、ありがとう!いつから働けるかな?」
「毎日誰かいないかって話してるから、今日からでもいけるよ!」
「ほんと?そしたら今日から働きたい!」
「わかった!…じゃあ夜中に。」
ハンナは人差し指を唇にあてウインクした。
午前2:50
僕は上半身を起こして、隣に眠るユウコを見る。
むにゃむにゃと気持ちよさそうだ。
顔にかかる黒髪をサラッと撫で、頬に手を滑らせる。
「ユウコ、僕頑張ってくるね。行ってきます。」
後ろ髪を引かれる思いを振り切り、ハンナと合流し酒屋に向かった。
「よお、ハンナ。…あ?誰だ?」
「アッシュよ!今日から働きたいんだって!」
「よ、よろしくお願いします!」
「おぉ大歓迎だよ、私は店長のライアンだ。こちらこそ頼むな。ハンナのボーイフレンドか?」
「…そ、そんなんじゃ、ないよ…まだ。ヒューゴは?」
「ハハハ!ヒューゴなら裏だよ。」
…ヒューゴ?
「さて、週にどれくらい入れるんだ?」
「1ヶ月間で、90ドル稼ぎたくて…ハンナに聞いたら1日3ドルって聞いたので毎日入りたいです。」
「ま、毎日?!…人手も欲しいし仕事はあるが、本当に大丈夫か?」
ハンナが去っていった奥の扉から男が入ってくる。
「なんすか、でっけー声出して!新入りってどこ……って、え?まてよおい、お前アスランだよな?!」
「…えっ…ヒューゴってこのヒューゴだったの!?」
「なんだよ、お前ら知り合いか?」
「随分前に話したじゃないすか!ケープコッドから2人乗せたって!」
久々に再会したヒューゴは全く変わらない姿だった。