ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
《アスランside》
「…僕、ちゃんと働けるんだよ。」
「あ?あぁ、分かってるけど?あんなに真面目に働いてるヤツ他にいねえよ。」
「ありがとう、ヒューゴ。」
「え、アスラン急になに?」
「ううん。…あ!いけない、もうこんな時間だ。早くお店に寄ってユウコのところ行かなくちゃ!」
「よし、じゃあ行こう。」
僕たちはバタバタと準備をして、ヒューゴの部屋を出た。
1ヶ月前にたまたまひとりで通りがかったアクセサリーショップ。
僕はショーウィンドウの、ハートが小さく輝く宝石を抱いているようなデザインのネックレスから目が離せなくなった。
とても綺麗…。
ユウコに似合いそう。
そういえばもうすぐ誕生日だ。
値段を見てみると90ドルだった。
靴磨きをしていればたまに気前の良いお客さんがいるおかげで、非現実的な値段ではなかったがやはり簡単に稼げる金額でないことは分かる。
靴磨きをして稼いだお金はもちろん2人の生活費だ。
もしユウコに何かをプレゼントするなら、僕だけの力で稼がなくちゃ。
頭にふっと、服を破かれ体の隅々まで舌が這い、無理やり捩じ込まれ最後には捨てるようにお金を投げつけられた記憶が蘇る。
違う、あれは仕事なんかじゃない…
レイプ…されていただけなんだ。
でも、お金をもらってしまった…。
ということは、僕はカラダで稼いでいた…
その瞬間、グッと吐き気が込み上げる。
座り込んで落ち着くまで荒い呼吸を繰り返した。
額の汗を拭い、
ゆっくりと立ち上がりネックレスに目を向ける。
…決めた、
これをユウコの誕生日プレゼントにしよう。
大丈夫、
僕はあんなことをしなくたって稼げる。
そう自分に証明したい。
ユウコのためならいくらでも頑張れる。
その日の夜、僕とユウコはペーターのグループとトランプをしていた。
その途中で喉が乾き僕は水場に行く。
すると後ろから足音がして、振り返るとそこにはハンナがいた。
「私も喉乾いちゃった!」
「あ、ハンナ…」
口元を拭いていると、壁に貼られた求人情報が目に入る。当たり前だが、9歳の子供を雇ってくれるところなどない。
「はあ…」
「アッシュどうしたの?」
「…仕事を、探してるんだ。」
ハンナにそう話したのはほぼ無意識だった。