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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第3章 最悪の目覚め


《アッシュside》


最悪の目覚めだった。
閉じ込めてもう一生奥底に閉まっておきたい記憶なのに、こうやって度々無意識に見せつけられて俺たちを苦しみから解放しちゃくれない。


今朝まだ起きるには早すぎる時間に、汗をかき息を荒らげ飛び起きた。夢の中でこれは夢なのだと認識できたことはまだ1度もなく、毎度馬鹿みたいに新鮮に心をえぐられる。

うなされて起きた時は、決まってあいつの顔が浮かぶ。
俺だけでいい。あんなクソみたいな奴らに眠っている時間までも嬲られ続けるのは俺だけでいい。どうか夢の中だけは幸せな時間を過ごしていて欲しい。いや、そうであってくれ。

ベッドを出てユウコの眠る隣の部屋へ向かう。一応ノックを3回、返事がないことは分かっているのでソッとドアを開ける。部屋に入った瞬間に感じる空気。


『…ハァハァ…うっ……』


ベッドの上で荒い呼吸を繰り返し、閉じている目から涙を流すユウコ。俺たちは夢の中の安寧すら許されないのか、一体俺たちが何をしたっていうんだ…。

『…アス、ラン』

俺の事をみんながアッシュと呼ぶなかで、こいつだけがずっと俺をそう呼んでいた。子供の頃アッシュと愛称で呼ばれるよりも、近い存在に感じた。むず痒くも嬉しかった。


「おい、ダイジョウブか?」


ダイジョウブとはAll rightの意で、と教わったのは8歳の時だ。あの日は本当に最悪な1日だった。俺のせいでこいつまで巻き込んで、結果その後も俺と共に地獄に堕ちることになってしまった。

お前は今いつの夢を見ているんだ?8歳の忘れられぬあの日か、それともその後14歳まで続いた地獄の日々か。


『……っん……』

苦しそうに身をよじるユウコの頭の両横に手を付き、膝をベッドに上げる。顔にかかる美しい黒髪をよけて近くで覗き込む。

俺の髪がユウコに触れる。ユウコの黒髪と俺の金髪はまるで光と闇だと思った。それは色味だけで実際には、間違いなく光はユウコで闇は俺だ。不釣り合いな自分の金髪をかきあげて思う。ユウコ、早くその深い闇から醒めろ。もう苦しまないで…。




「…ユウコ?ダイジョウブか?」


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