ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第3章 最悪の目覚め
「…い……か」
誰かの声がする。
「…おい、ユウコ」
『……っん……』
「…ユウコ?ダイジョウブか?」
その言葉に目を開ける。
私の顔の両横に手をついて覗き込むように見ていたのは、サラリと流れる美しいブロンド、そしてグリーンアイズ。
『…アスラン、』
「……ハッ、やだなぁ、寝惚けてるの?俺はアッシュ・リンクス、17歳。お前は?」
『……ユウコ・リンクス、17歳…』
「正解、…夢の世界からおかえり。ネムリヒメ?」
アッシュはそう言って、右の人差し指の背で私の目に溜まっていた涙を愛おしそうに掬うと近くのソファに座った。
『…また昔の夢見てた』
「ああ、ひどくうなされてた。」
『アッシュ、大きくなったね…夢の中では私たち変わらないくらいだったのに。』
「……どっちの?」
『え?』
「どっちの夢、見てたんだ?」
『あぁ……8歳の。』
「…俺はその後の方だ。全く、今日も一段と最悪な目覚めだったぜ。…お前はどうしてるかと思って覗きに来てみれば、うなされてるし。せっかくなら同じ夢を見たかったな。」
アッシュは少し大袈裟な手振りをしながらそう言う。
『ねぇ、アッシュ?』
「なに?」
『…抱き締めて』
「今日だけ特別だぜ?…ほら、こいよ」
ソファに座りながら両手を広げるアッシュ
ベッドから出てその腕の中に飛び込む。
ギュッと抱き締められる。
夢の中で抱き合ったアスランは私と同じくらいの大きさだったのに、今ではすっぽりと彼の腕の中に収まってしまう。
『アッシュ…ほんとに大きくなった』
「…かっこよくなった?」
ニヤリと笑いながら言うその顔は、誰よりも何よりも格好良くて美しい。
『い、言わない!』
「ハハッ、…髪、伸びたな。」
肩甲骨くらいまで伸びた私の黒髪をアッシュはスルスルと指で遊ぶ。
『…綺麗になった?』
さっきの仕返しだ!とばかりにそう言うと、
「あぁ、お前は昔からずっと綺麗だよ」
笑いもせず、そうサラッと言ってのけるものだから私は恥ずかしくなってアッシュの胸に顔を押し当てた。